ガラの悪ィ老けた男 ページ39
怒っている様子は見られないが、多少不機嫌にさせてしまったのは確かだろう。
──てめェ、報告が遅すぎやしねェか……？
「報告……あ〜〜〜……そちら、どちらさんで？」
渋くゴツイ声が、サンジの頭にクエスチョンマークを浮かべさせた。
自分を誰かと勘違いしている会話の内容に、サンジは相手を探ろうと回答を求めた。
──おれだ。“Mr.0”だ……。
「Mr.……0……？」
一呼吸置いたサンジは、タバコを噛み締めると無意識的に真っ白な天井へと視線を移す。
受話器口とはいえ関節的に相手している男がクロコダイルだと理解したサンジは、ばつが悪そうに顔を顰めた。
しかし、そんなサンジの顔など知らず、クロコダイルは話を続ける。
──おれが司令を出してから、もう随分日が経つぞ。いったいどうなってる、Mr.3。
電伝虫の飼い主がMr.3であることを知ると、サンジの頭は回転を始めた。
この不自然に建てられた人工物は敵のアジトであり、ビビの命を狙う追っ手がこの島に潜伏していたことにようやく気がついたサンジは、仲間の安全を願う。
──何を黙りこくっている。王女ビビと麦わらの一味は抹殺できたのか？
「…………。……ああ、任務は完了しましたよ。あんたの秘密を知っちまった野郎どもは
──全て？ てめェまさか、あいつも殺ったんじゃないだろうな？
「？」
受話器から微かに聞こえていた酒を注ぐ音が、ピタリと止むと同時にクロコダイルの声がサンジの耳を刺激した。
──言ったはずだ。ガラの悪ィ老けた男だけは殺すなと……まさか忘れてたわけじゃねェよな。
「(ガラの悪い……男)」
男ではなく、可憐な雰囲気をただよわせる美女のナミとビビは違う。
この一味の中で最もガラの悪くないルフィと、社交的なウソップは違うだろう。
それなら、マリモ剣士か？ と、サンジは舌打ちを飛ばしたが、大人びてはいるが彼は老けてはいない。
一味の中でガラが悪く、尚且つ老けている男と言えば──
「A？」
──そうだ。殺しちゃいねェだろうな？ 元より、てめェに敵う相手とは思っちゃいなかったが。
クハハと小さく笑い声が聞こえた。
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作者名：ヒロ子 | 作成日時：2022年9月22日 19時
