【wrwrd】素敵で妖艶な最低女

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単純な男は女の涙に弱い。一度信じた相手には疑わしいことがあっても信じようとする、と言ったのは誰だったか。一度泣き落としを掛けてしまえば、単純な男はある程度私のことを「かわいそうな女」として認識する。

ああ、腹立たしいったらありゃしない。手玉に取られているのも、情報を搾り取られているだけだということも今は言えないけれど、いつかバラしてやったらどんな反応をするだろうか。そんなことを考えて溜飲を下げる。


それに比べて、新しくペットにした鬱くんは有能だ。やはりペットは可愛くて賢いのが良い。気まぐれなのは私だけで十分でしょう？

ベッドで大の字で寝ている男を横目に地面に落ちている服をまさぐって、鍵を取り出す。点々と落ちている服は情事の跡を残して妙に生々しい雰囲気を醸し出している。その跡を辿って自らの服を回収して着替えていく。玄関から出て、男から取った鍵で扉を閉めてポストの中に入れておく。手紙は残したから大丈夫でしょ。

鞄の中にある香水を軽く首あたりに振りかけて、依頼主との集合場所へと向かう。定期連絡だ。

裏路地は相変わらず薄暗く、怪しい露店があちこちに点在している。更に狭い路地からは怪しい男がチラチラとこちらを伺っていて、恐らくタダのゴロツキか闇の臓器売買トレーダーか何かだろう。次からはもっと表の、カフェだとかそういう良いところを指定してやろう。

「……来たか」
「こんにちは。情報を聞き出したのはこのリストの…、このページかな」

全身をフードで隠した男に対してリストを見せる。顔面に赤色でバツを着けているのが既に情報を聞き出した奴ら。

「そうか。では情報を……」
「でも、お兄さんはお金払ってないよね」

そう呟けば薄ら見える目がこちらを睨みつけて、周囲の建物のどこかから殺意がこちらに向いてくる。私は両手を上げて反抗の意思がないことを証明しながら、笑顔で続けた。

「だから、お金の代わりに欲しいものがあるんだけど」

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