【wrwrd】素敵で妖艶な最低女

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モブ出てきます
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鬱くんを追い出した。別に彼が面倒になって捨てた訳じゃない。
単純に、相手を変えるためだった。男遊びの多い女性が好きな男性は、同じく女遊びの多い男性くらいしかいないのだ。

唇に紅を塗る。いつもより薄く、紅と言うよりは桃に近い色だけれど。今日はこっちの方が良い。シチュエーションというのは一種のスパイスであり興奮剤だ。

世間を知らない上国民なんかは特に夢を見がちで、底辺に行けば行くほど夢を見なくなる。私がそうだったから、きっと。
だって、結局夢なんて叶わないのだから。我慢すれば手に入る確証なんて1つもない。

だから今日の私は、とびっきり可愛い女の子だ。守られるべき、お姫様のようにかわいい。いつもの私は鬱くんと一緒にベッドに眠っている。

「……今日もかわいいね」

鏡の中の自分にそう囁けば自分はにこりと笑みを浮かべた。うん、準備万端だ。
扉を閉めて鍵を掛ける。中に盗られて困るものなんて特に無いけれど、この部屋はしばらく使わない。

街を歩きながら近所の本屋にあるこの街の地図を手に取る。本屋のお爺さんにお金を払い、少し離れた食事処へと向かった。手書きの簡易的な地図を見ながらきょろきょろと周りを見る振りをする。
そのついでにターゲットを確認した。軍服を着て大柄な態度をしながらご飯を食べている男性。その髪は光に当たって反射し、綺麗な身なりをしている。その男性とばち、と視線が合うと無垢な少女のフリをして、地図を持ったまま彼に近寄る。

「……あの、軍人さんですか？」
「あ、ああ」
「すいません、兄に会いに来たんですけど、迷子になっちゃって……」

そう言いながら身を寄せて触れるか触れないかくらいの距離感で地図を見せる。
迷子になっている風を装って、場所と行き方を教わる。もちろん私に兄はいないし、働いてる人間は私のペットの一人だ。

「なるほど、ありがとうございます。軍人さんに会えて良かった……一人だったら大変なことになるかもだし……」

安心したように微笑みながらも、不安そうな目で地図に目を落とす。目的地はどうしても裏道を通らないと行けない場所だ。そんなところを、無垢な女性一人だけで歩かせるわけいかないでしょう？お貴族様は、そういったところで紳士だ。

「お、俺案内してあげるよ。いざとなったら守るから！」

そう名乗りを上げた彼に、感謝の気持ちを込めて微笑む。そこに計画が上手くいっている喜びの笑みを隠した。

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