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身支度を済ませて家を出る頃には鬱くんは何故か起き出してキッチンを探っていた。
「荒らさないでね」
「あれ、もう出てくん?朝飯作ろうと思っとったのに」
「……え、作ってくれるの?」
「昨夜はええ思いさせてもらったから……」
ポッ、なんて口で言いながら頬に手を当てる鬱くん。見た目は完全に恋する乙女ではある。
すぐ用意するけど、なんて言いながら、ほとんど使ったことの無いフライパンをくるくると回す彼の顔を見ながら、少し悩んだ。朝の食事は、少し魅力的ではあるけれど、私の雇い主が待っている。
少し考えて、悩んで……、そして鬱くんの手元を見るように背中にべたりとくっついた。
「邪魔やねんけど……」
「そんなこと言って良いの?」
すり、と彼の腕に指を這わせる。びく、と体が跳ねた。彼の耳元に口を寄せて、息が吹きかかるくらいの位置で囁く。
「返事は?」
すっかりお馴染みとなってしまった言葉に鬱くんは上気した顔を見せながら頷いた。偉いね、と頭を撫でて、椅子に座る。褒められたことですっかり犬のように嬉しそうな顔をして食事の準備を始めた。猫みたいな性格をして、意外とかわいいところもあるものだ。きっと今まで女の子を可愛がることはあっても、女の子に可愛がられることは無かったのだろう。
「鬱くんって、お仕事してないの?」
「さすがにしてますけど?」
「そうなんだ。こんな時間までゆっくりしてて良いの?」
「まぁ俺がおらんくてもなんとかなるしなぁ」
「ふーん…?」
以前雇い主に貰った紙の内容を思い出す。情報部の、そこそこ良いところに居たはずなのに、本当に良いのだろうか。確か他にも何人か情報部の人間は居たけれど、鬱くんと同期ではあるから、特別鬱くんが偉い訳では無いはずなのに。
「じゃあ今度、鬱くんの奢りでご飯食べに行こ」
「頑張ります……」
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なのな(プロフ) - 完結おめでとうございます!まさかまさかの死ネタで…死ネタ大好物なのでとっても美味しかったです…!ハピエンもついニマニマしてしまう展開で幸せいっぱいです^^これからもご無理なさらず、素敵な世界を描いていってください!素敵な作品をありがとうございました♡ (2023年1月17日 15時) (レス) @page33 id: 6c4616e779 (このIDを非表示/違反報告)
狐の巫女(プロフ) - 完結おめでとうございます!!ハッピーエンドもバッドエンドもどちらも好きです!最初の頃から見ていて、とても惹き込まれる素敵な作品でした!今もう感極まって…語彙力が消滅したので文章が変でもお気になさらずに。改めまして、完結おめでとうございます!!! (2023年1月12日 23時) (レス) @page33 id: 454b91df9e (このIDを非表示/違反報告)
ランドルせ(プロフ) - 海さん» コメントありがとうございます!頑張ります!!! (2022年7月26日 17時) (レス) id: 29ab01aaa3 (このIDを非表示/違反報告)
海 - うわぁめっちゃタイプな作品だぁ。こういう夢主ちゃんを待ち望んでいたんです。更新待ってます!ただし無理のないように。 (2022年7月25日 9時) (レス) id: 5511dd41f6 (このIDを非表示/違反報告)
ランドルせ(プロフ) - 車道さん» コメントありがとうございます!ゆっくり更新ですみません……。必ず完結まで書ききりますのでご安心ください!更新頑張ります! (2022年7月7日 3時) (レス) id: 29ab01aaa3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ランドルせ | 作成日時:2022年3月8日 20時