トラウマ来る！ ページ1
どうするのか最善か考えていると、9代目の悔いる言葉に被せるようにしわがれた声がこう言った。
「まだ光は消えとりゃせんぞ」
声に釣られて視線を向けると、しわしわの今にも倒れてしまいそうな老人が杖を頼りに歩いていた。9代目が歓迎するように腕を広げる。その声色は尊敬の念で溢れていた。
リボーンがあの老人のことをボンゴレに仕える最古の彫金師だと紹介している。
タルボさん……。舌の上で馴染ませるように名前を繰り返した。リングを覗き込み、話しかけている様子から、どうしてだか警戒心が募る。
「おい、9代目よ。どーするね？ボンゴレリングは生まれ変わりたがっとるぞ」
「生まれ……変わる？」
「……ということは、タルボじじ様、まだボンゴレリングは……」
「死んじゃおらん。ガワが壊れとるだけじゃ」
どういうことだろう？ガワ……器ってことか。となると、リングの真性は中身に宿っていて、器が壊れようと中身を移せばいいってことかな。
なるほど、僕と似ているね。
「優れたリングには魂が宿る。魂あれば感じるところもある」
ん？そうなると、リングの中身は後天性ということになるね。じゃあ、僕と違うな。ああ、いや、そんなことはどうでもいいんだ。
長ったらしいタルボさんの話を要約すると､彼らに勝つためにはリングをバージョンアップさせる必要があるとのこと。アニマルリングの魂も必要だと言い切ったタルボさんはマントを広げて数多の材料を吟味する。
「あったあった、これじゃ。ボンゴレ�祇い侶譟◆犯魁匹犬磧�
「�祇い侶譟�？」
「“罰”！！？」
“罰”を持ったタルボさんは再びマントを探る。そうして頭を掻くと、不意に僕に目を向けた。
「ところで、そこの真っ黒いもんはなんじゃ？」
「真っ黒いもんって？」
「こやつじゃよ」
タルボさんが僕に近寄る。支えの杖でバシバシと叩かれて、ようやく僕のことかと自覚した。真っ黒いもんって言われてもねぇ……。
「人間に戻れ。半神でおるのは魂が軋むぞ」
「……なんで分かるんですか」
借りっぱなしだったエンティティさまの力を戻す。黒い霧が体を覆い隠し、それが晴れた頃平衡感覚が失われて少しふらついた。
自力で持ち直してタルボさんを見る。しわがれた笑い声に少し眉を顰めた。
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作者名：怜
| 作成日時：2023年2月20日 23時
