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「ししし、天才の勝ちー。つーかオレ負けなし?そりゃ王子だもんな。バイバイ」
トドメをさすためにナイフが投げられる。顔を上げたヒバリはナイフを両手で受け止めた。その表情は険しく、彼の言葉を借りるならムカつくと言ったところだろう。
「へえ、なるほど。ナイフに糸がついてたんだ。まるで弱い動物が生き延びるための知恵だね。そういうことなら」
再度握りしめたトンファーの尾から分銅鎖のようなものが飛び出す。ヒバリはそれを振り回し、周囲に張り巡らされているワイヤーを切った。
「一本残らず撃ち落とせばいいね」
「や……やっべ……」
「覚悟はいいかい」
好戦的な笑みを湛えて、ヒバリがベルフェゴールに肉薄する。冷や汗をかいているベルフェゴールはその場から飛び退けて、パスと言った。
「自分の血ー見て本気になんのも悪くないけど、今は記憶飛ばしてる場合じゃないからさ。だってこれ集団戦だぜ?他のリング取り行こっと」
最後にナイフを投げて、ベルフェゴールはその場を引く。トンファーで弾いたヒバリは不満げに呟いた。
「口程にもないな」
そう言うヒバリもあらゆる場所に傷がついていて、トンファーを振るった拍子で血が飛び散る。出血のしすぎでふらつくヒバリは、壁に体を預けた。
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side:A
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B棟に辿り着いてすぐポールの上に飛び乗って、リングを取る。そのまま山本武の近くに着地し、手首を持ち上げてリストバンドにリングを嵌め込んだ。
「ふ〜〜〜、いやーまいった……サンキュ!助かったぜ」
「別に。これが僕の役目だから」
「そういや、Aはヒバリに助けてもらったのか?」
「自力で出たけど」
「えっ?」
何か文句ある?と睨めば、山本武は慌てて首を振る。あとは好きにしなよ、と言い残してその場から去ろうとすれば、体が軋んだ。
やっぱ無茶しすぎたかな。というか、脱出方法がバカだったんだよ。エンティティさまの触手でこじ開けて、這いずればもっと簡単だったのに。イライラして冷静じゃなかったの顧みなきゃね。
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作者名:怜 | 作成日時:2022年10月11日 19時