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「ししし、天才の勝ちー。つーかオレ負けなし?そりゃ王子だもんな。バイバイ」


トドメをさすためにナイフが投げられる。顔を上げたヒバリはナイフを両手で受け止めた。その表情は険しく、彼の言葉を借りるならムカつくと言ったところだろう。


「へえ、なるほど。ナイフに糸がついてたんだ。まるで弱い動物が生き延びるための知恵だね。そういうことなら」


再度握りしめたトンファーの尾から分銅鎖のようなものが飛び出す。ヒバリはそれを振り回し、周囲に張り巡らされているワイヤーを切った。


「一本残らず撃ち落とせばいいね」

「や……やっべ……」

「覚悟はいいかい」


好戦的な笑みを湛えて、ヒバリがベルフェゴールに肉薄する。冷や汗をかいているベルフェゴールはその場から飛び退けて、パスと言った。


「自分の血ー見て本気になんのも悪くないけど、今は記憶飛ばしてる場合じゃないからさ。だってこれ集団戦だぜ?他のリング取り行こっと」


最後にナイフを投げて、ベルフェゴールはその場を引く。トンファーで弾いたヒバリは不満げに呟いた。


「口程にもないな」


そう言うヒバリもあらゆる場所に傷がついていて、トンファーを振るった拍子で血が飛び散る。出血のしすぎでふらつくヒバリは、壁に体を預けた。



***

side:A

***



B棟に辿り着いてすぐポールの上に飛び乗って、リングを取る。そのまま山本武の近くに着地し、手首を持ち上げてリストバンドにリングを嵌め込んだ。


「ふ〜〜〜、いやーまいった……サンキュ!助かったぜ」

「別に。これが僕の役目だから」

「そういや、Aはヒバリに助けてもらったのか?」

「自力で出たけど」

「えっ?」


何か文句ある?と睨めば、山本武は慌てて首を振る。あとは好きにしなよ、と言い残してその場から去ろうとすれば、体が軋んだ。
やっぱ無茶しすぎたかな。というか、脱出方法がバカだったんだよ。エンティティさまの触手でこじ開けて、這いずればもっと簡単だったのに。イライラして冷静じゃなかったの顧みなきゃね。

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作者名: | 作成日時:2022年10月11日 19時

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