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一 三 ページ4

どれくらい走ったろうか。ふと疲れを感じ、速度を緩めた。


きょろきょろと周りを見る限り、どうやら先ほどまでいた貧民街のようなところではない。


その事実に安堵し、ほっと息をつく。


すると、自身の服のポケットから振動が伝わってきた。


探ってみると、それはいつも仕事用に持ち歩いている携帯端末だった。


電源をつけると、それは図書館からの通話だった。



急いで緑のボタンを押す。すると


『A! 大丈夫か!?』


という、なんとも切羽詰まったアカくんの声が耳を突き抜けた。


「う、うん、まあ、生きてるよ……」


きぃぃん、と耳鳴りが止まぬまま答える。




アカくんは、私に対して少々過保護だ。


特別彼と深い仲という訳でもないし、彼に何かした覚えもない。が、彼は何かと私の事を心配するのだ。


アオくんや館長にきくと、髪色とかが似てるから、妹だと思ってるのではないか、との事。


妹なんて失礼な人だ、となんど怒ったことか。年齢なら私の方が上なのに。



『……おい、聞いてるのか?』


「あ、ごめん。もう一回言って」


『ったく、アンタってやつは……。良いか? もう一回言うから、聞いてろよ』




どうやら、お察しの通り此処は本の中らしい。


その名も『文豪ストレイドッグス』。私が片付けようとしていた本のうちの一つ。


しかし、それはまだ有碍書にも有魂書にもなってない本だ。


何故潜書できたのか。何故本人の意思とは関係なく潜書してしまったのか。


今のところ、その二つが最大の疑問点であるとのこと。

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作者名:ウルフ | 作成日時:2018年3月21日 11時

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