一 予想外との邂逅 ページ2
人が撃たれるのを見た。
それは一瞬の出来事だった。頭がぱぁんと吹き飛んで、助からないというのは火を見るより明らかであった。
首のないそれは、いくら触ってもピクリとも動かない。そんな私の前に、一人の少年が姿を現した。
何も映さない、闇その物のような瞳が私を捕らえる。
ほんの少しの間を置いて、彼はこちらに歩み寄ってきた。
そして彼の衣服は変形し、刃となって私の首元に来た。
私はそれを、ただ見ていた。まるで、他人事のように、見ていた。
何故か?
答えはいたって簡単。そんな事、日常茶飯事だったから。
特務司書である私は、情報収集の為にも、しばしば先生方と一緒に有碍書に潜ることがあった。
もちろん守られるだけなどあり得ない。先生方は守ったるで!と意気込んでいたが、私がそうはいきますかと無理を言って浄化に参加していたのだ。
まあもちろん私もアカくんアオくんに引けを取らぬ優秀なアルケミスト。
自身の著書を、うまい事武器に変えて浄化活動していたわけだ。
武器の種類は刃。といっても、武器はチェーンソーなので、振り回してるだけで割と浄化できた。
そんな風に過ごしていれば、刃を向けられることなど当たり前。何の恐怖も感じなくなるほどに、当たり前になっていた。
それも、異常なのだろうけど。
一切表情を変えぬ私に何を感じたのか。黒い男はさらに距離を縮め、私の目の前まで来た。
座り込んだ私に手を伸ばす。
そして、そのまま――……
私の首根っこを掴み、持ち上げた。
「っひ、ぅあ」
急な息苦しさに、思わずか細い声が漏れる。
苦しい、苦しい、苦しい!放せ放せ放せ放せ!
必死に男の手をひっかく。同時に、気付く。
自身の手が、体が、縮んでいるという事に。
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作者名:ウルフ | 作成日時:2018年3月21日 11時