ずっと前からオマエしか見てねえよ【灰谷蘭】

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Aの話を聞くと、どうやら前の彼氏が俺が言うのもなんだけど相当なクズだったみたいで、借金を押し付けられた結果ここで働いているらしい。




前々から思ってたけどマジでコイツ男運悪い。

っつーか彼氏いたなんて知ったら兄貴激怒モンじゃねえの。この後ここ来る予定なんだけどな。




『兄貴、仕事終わった？着いてるから先VIP席いるわ』



『んー今終わったわ。近くいっからすぐ行くな』






どうしようもねえ男にしか当たらないAに呆れながら兄貴にメッセージだけ送る。

すぐ来ると返信が来たから、先に話だけ聞いてしまおう。



「で？お前の借金いくらなの」



「い、一億」


俺がグラスを傾けながら問うとAは罰が悪そうに視線を逸らしてそう言った。

……そりゃゴシューショーサマ。




まあ一般人には返せねえ額だろうからここにいるのは納得だわな。



つーか今の話を聞いて思い当たる男が一人いる。
もしかして、とその男の名を出し、顔写真を見せるとAは驚いたような顔をしながら頷いた。




ビンゴだ。確かコイツ、数ヶ月前に三途の管轄の店でやらかしたっていう男。

以前一億の借金を抱えていたが、恋人の女に責任を押し付けたっつう話も聞いてたけどよりにもよってAの元彼かよ。運悪すぎだろ。




とりあえずAは兄貴のためにも本日付けでここは解雇。

説明は……そうだな。到着したみたいだし丁度良い。今してしまおう。




「おい竜胆、お前何で嬢一人だけ付けてVIP行ってん、だ……」



無遠慮に開かれた扉から見慣れた菫色の瞳が顔を覗かせる。


そのまま固まってしまった兄貴にAが「ら、蘭……」と声を掛け、こんな場所で十二年越しの再会が果たされたのだった。

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