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57_天国と地獄 ページ13

ヒロキside



監視がない時間は、いつぶりだろうか。



「Aさん!!」



すがるように、僕はAさんに抱き着いた。

ずっと、ずっと、会いたかった…!



「…独りで辛かったね。ヒロキ君」



僕の頭を撫でて優しくなだめてくれるAさん。

ひとりっ子だった僕にとって姉のような存在だった。



「Aさんとアメリカの大学で会ってからしばらくして…母さんが亡くなったんだ。」



父と離婚後の親権問題を利用され、強引に組織へ引き入れられたことを、時々言葉に詰まりながらもなんとかAさんに伝えた。



「隔離され、毎日のようにパソコンから犯罪行為を繰り返した。もう嫌だった…、僕は死ぬ事で自分の罪から逃げようとしたんだ。でも、ベルモットに見つかって…」

「残された人間のことを考えたことある?」



咎めるような声に、言い表せないような黒い感情が僕の中で渦巻く。

誰も助けに来てくれなかった人のことなんて、考えるわけないだろう。



「…でもそんなこと、私が言える立場じゃないよね。ごめんなさい…っ、」

「っ、Aさん…!?」



Aさんは泣いていた。

別に責めたかったわけじゃない
もっと楽しい話をして、前みたいに笑い合いたいたかった。

それなのに



「ご、ごめんなさい!僕の心が弱かったからで…僕はもう大丈夫だから…!」



僕は慌てて机の上にあったティッシュを手に取りAさんへ差し出す。

泣いている女の子のなぐさめ方なんて、僕は知らなかった。



「ヒロキ君がいなくなっちゃうなんて──心が張り裂けそうになるほど、辛いよ。」

「あ…」



おもむろに外された眼鏡、レンズの後ろに隠されていた瞳を見た瞬間に僕は息をのんだ。

暗闇の中で、光が差し込んだかのようだった。



「死んじゃだめ… 死んだら、後悔と悲しみしか残らない。」



綺麗だ

場違いにも、ぽろぽろと零れ落ちる涙が、瞳が、宝石のように綺麗だと思った。



「お願い…もうそんなこと考えないで。」



──私のために、生きて。

彼女の静かな心の叫びは、冷めきっていた僕の心に深く突き刺さった。



「僕、はじめ生きてて良かったって思えた。」



心から笑う彼女の表情が、儚げで、尊くて…

この気持ちをなんて言い表すのか、僕はまだ知らない。


けれど、捨てるのにはまだ早いと思い直せるほどの光を、この世界で見つけたのは確かだ。

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仮面タロウ(プロフ) - 43 −ヨミ−さん» コメントありがとうございます!不安定な夢主の表現は特に気を使って書いてたので、そう言っていただけて本当に嬉しいです…!!更新頑張ります!! (2022年6月11日 23時) (レス) @page31 id: 2292ab7783 (このIDを非表示/違反報告)
43 −ヨミ−(プロフ) - 初めまして、コメント失礼致します´`* それぞれのキャラとの関係、文章の構成、過去故に生に執着しているのに論理感がどこか欠如してる夢主ちゃんとか書き切れないくらいに好きです…!!!!! 更新お疲れ様です、応援しております!!!! (2022年6月10日 21時) (レス) id: 1d67640196 (このIDを非表示/違反報告)
仮面タロウ(プロフ) - 雷音@RAINEさん» 私もニヤニヤ顔か見られないよう細心の注意を払いながらこのコメントを見ています笑。(ヒェ…勿体ないお言葉…!ありがとうございますこれからも頑張ります!!) (2022年5月31日 17時) (レス) id: 2292ab7783 (このIDを非表示/違反報告)
雷音@RAINE(プロフ) - 面白すぎて電車内で笑わないように下唇を噛み締めて我慢しているこの頃です(略:え、何この神作品!?今までに読んだことないほど面白いです!) (2022年5月30日 16時) (レス) @page15 id: 777f8f5945 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:仮面タロウ | 作成日時:2022年5月24日 17時

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