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第一話 ページ1

落ちて行く、斜めの太陽。次第に街灯が、チラホラと付き始めた頃。
自分の判断で出掛けたが、思わず深い溜息が出る。

「人が多い所は、矢張り慣れ無いものだね」

私は、誰に云うでも無い独り言を零す。未だに慣れ無い街並みに、戸惑う。
人を避け、薄暗い路地裏に入る。
この雰囲気には不思議な魅惑があり、胸が高鳴って仕舞う。

「我ながら、何時も何時も飽き無いな」

私__Aは昔から放浪癖があった。
特に心配したり注意したりする人も居らず、自由気ままに歩き廻るのはとても愉しい。
時々変な奴に話し掛けられるが、大抵は何とかなる。

「そこのお嬢さん!金髪の小さい少女を、見てい無いかい?」

突然冴えない優しそうな中年男性が、話しかけて来た。

「不審者?えっと警察警察」←

「非道い!心の声が丸聞こえだよ」

大人しそうな性格に見えたが、相当慌てていた。心なしか涙ぐんで居る。

「金髪の小さい少女?見てません」

「そうか…何処に行っちゃったんだろう、エリスちゃん」

エリスちゃん。可愛らしい名前だなぁ。此れも何かの縁だ、手伝おうかなど考える。
大丈夫、護身用に防犯グッズを持っている。

「私で良かったら探すの、手伝いましょうか?」

其の瞬間目の前の男性は、パァァと明るくなり「本当かい!」と喜んでいた。
何かあったらすぐ逃げればいいし、まぁいいか。

「自己紹介が未だだったね。私は森鴎外、元医者だよ」

「紫苑 Aです」

私は薄く笑ったが、疑問を持った。
小さい少女、つまり子供を探して居るのにこんな、路地裏で探すだろうか。
其れに森鴎外と云う名前、聞いた事がある様な気もする。

「どうなる事やら」

愉しそうに呟くと、森さんは不思議そうに首を傾げた。

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作者名:時雨猫 | 作成日時:2017年1月24日 18時

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