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来るな、と言わないあたり何か企んでんな。
「六時には来る」
「はいはい」
カウンターで顔を伏せる影山。態度が柔らかくなっているし、どうやら眠いらしい。さっきの不気味な態度もただの眠気によるものだったらいいんだが。
「そんなとこで寝て椅子から転がり落ちても知らねーぞ」
「君に心配されなくてもこんな所で寝ないよ。皿洗い終わったんだろ? 早く片付けて帰って」
手で虫を払うジェスチャーをされる。態度が柔らかくなったと言った数秒後にこれだ。
「明日の朝は果物も食べたいな。スイカとか」
荷物を持って玄関に向かうと、その後ろを影山がついてくる。だからといって見送りでは決してない。俺が出ていった後にチェーンをかける為だろう。
「時季じゃない上に重てぇの選んで、嫌がらせだろ」
「うん」
黒曜石のような目をいたずらっぽく細めて笑う。笑顔は兄とそっくりだが、向こうが常時ヘラヘラしているのに対して影山は意外に表情豊かだ。
アパートの玄関が錆びた音を立てて閉まる。それとほぼ同時にガチャリと鍵が閉まる音がした。
「……チッ、調子狂うぜ」
***
「なんだこれ」
不動が帰った後、家の中を調べているとあからさまに怪しげな小箱が出てきた。絶対にアイツが置いていった物に違いない。軽く指で叩くとキンッと硬い音がする。
開け口はあるが、四桁の暗証番号を入力しないといけないみたいだ。数字だけでも一万通りある組み合わせを当てずっぽうで破る自信も、虱潰しに探す気力も無い。
振ってみたが物が擦れる音一つ立たなかった。
「中身はなくて箱自体に意味があるのか? 」
こんな物をなんで僕の家に置いて行ったんだ。エアコンの隙間にわざわざ忍ばせてるってことは忘れ物でもないし、かと言って本気で隠した訳じゃない。
「……あれ」
家に備えてある時計の物とは違う、秒針の様な音が箱から微かに漏れている。
よくフィクションでは時限爆弾に時計が備わっているが、現実でそんな無駄な機能をつけることはまずない。それにこの小箱は小さ過ぎる。万一爆発したとして僕の部屋が軽く焦げるくらいだろう。いや、普通に困るから爆発物であってほしくないが。
暗証番号が分からない以上無闇に触るのも危険だ。ロックがかかるだけならまだ良いが、下手したらそれこそ爆発しかねない。
早い所シャワーを浴びて寝てしまおう。
小箱をテレビデッキの収納に投げ入れバスルームへと向かった。
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名無し40482号(プロフ) - 夢蜂さん» ホントですか! ありがとうございます。久しぶりに筆をとったのでお見苦しい点もあるかと思いますが、完結までまだまだこれからなので長い目で応援して頂けたらと思います(^^) (2020年11月13日 20時) (レス) id: b02fa3353c (このIDを非表示/違反報告)
夢蜂(プロフ) - 久しぶりに占ツクに帰ってきたら好きな作品に巡り会えました!更新ゆるりと待ってます!! (2020年11月13日 12時) (レス) id: e0800992ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:名無し40482号 | 作成日時:2020年10月18日 21時