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テーブルに向かうと、三段に積み上げられたホットケーキにこれでもかと蜂蜜がかけられていた。乗せられている正方形のバターは、熱によってジワジワと角に丸みを帯びていく。テレビでよく取り上げられているスイーツ特集で紹介されている売りものに引けを取らないクオリティだ。
「……」
意を決してナイフをホットケーキに入れる。表面はやや固いが、中は柔らかく切ることに難儀せず済んだ。一口サイズに切って、蜂蜜が服に垂れないよう慎重に口に運ぶ。
「君、どうしてこんなの作れるの」
「なに。もしかして影山ちゃん作れねえの? 」
美味しいんだけど素直に感想を言いづらいのが腹立つな。
黙々と食べ進めていると、コトンッと横に小皿が置かれた。
「西瓜。あとサラダ」
それだけ言うと不動は自分の食事に向き直ったが、小皿を渡す時に一瞬見せた笑顔は穏やかなものだった。
どうして不動が笑っているのか分からず──
「え、あぁ。ありがと」
すっかり面食らってしまった。
朝食を食べ終わると時刻は六時近くになっていた。食後の珈琲(不動が淹れたインスタント)を飲みながらテレビを眺める。
「今日の天気は晴れ。黄砂の影響も少なく、良い洗濯日和となり──」
アナウンサーの女性が今日の天気を読み上げた。洗い物が粗方終わった不動も僕の隣で珈琲を
「ねぇ」
「あ? 」
なんでそんなに喧嘩腰なんだ。
「使ってる調理器具とか食材買うお金、やっぱり兄さんから出して貰ってるの? 」
「そーだけど。そんなしっかり食費として渡されてる訳じゃねぇな。俺への報酬分から捻出してるって感じ」
つまり僕に飯を作れば作る程不動の収入が減るのか。
「影山ちゃん、意地の悪いこと考えてんな? 」
「そんなことないよ。あ、僕今日ステーキ食べたい」
「高い食べ物の解像度低すぎんだろ。影山家で育ったとは思えねぇわ」
「君が僕にどういうイメージを持っていたかは知らないけど、鬼道君みたいな温室育ちを想像していたなら見当違いだよ」
「ハハッ。あぁ、もしかして地雷だった? 」
「別に」
これは本心だ。知られて困ること以外は、別に探られたってなんとも思わない。
手元の珈琲は、すっかり冷たくなってしまった。
「そうだ。昨日の朝か夕方に、わざわざエアコンの隙間に小箱置いて行ったね」
「へぇ、もう見つけたのか。あれ何が入ってた? 」
「は? 君が置いて行ったんだろ」
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名無し40482号(プロフ) - 夢蜂さん» ホントですか! ありがとうございます。久しぶりに筆をとったのでお見苦しい点もあるかと思いますが、完結までまだまだこれからなので長い目で応援して頂けたらと思います(^^) (2020年11月13日 20時) (レス) id: b02fa3353c (このIDを非表示/違反報告)
夢蜂(プロフ) - 久しぶりに占ツクに帰ってきたら好きな作品に巡り会えました!更新ゆるりと待ってます!! (2020年11月13日 12時) (レス) id: e0800992ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:名無し40482号 | 作成日時:2020年10月18日 21時