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「うわッ、うるさ……! 」
勢いよく一階の窓ガラスが空き、円堂が雷門中全体に響く程の大声で叫んだ。名指しされた風丸と綱海以外のメンバーも何事かと声のほうへ視線を向ける。
「えっ。いきなりどういうことだ!? 」
「なーんかよく分かんねーけど、任せろ! 」
よりによってディフェンス本業の二人に進路を阻まれた。
「もー、面倒だな! 」だけどこの二人相手なら──
一旦足を止めてやや減速し、右側に上半身を揺らす。風丸は引っかからなかったが、綱海がフェイントに釣られた。右の重心を左に移して一歩進むと、追いつこうと綱海が体の向きを切り替える。しかし、踏み込みすぎると風丸とぶつかる距離だ。
風丸もそれを察して足を止めた。一瞬でも崩せれば後は空いたスペースから抜き去ればいいだけ。
「くそっ、すまん、抜かれた! 」
「ッ!? 風丸てめぇ……! 」「痛! なッ、不動!? 」
綱海と風丸の間を通り抜けようとした不動が、体勢を変えた風丸とぶつかり巻き込む形で倒れ込む。
「あはは! ラッキー! 」
足の速い風丸がすぐ持ち直して追いかけてきたら、逃げきれなかったかもしれない。
「飛鷹ー!! 」
円堂の大声が後ろから聞こえた。僕の進路先には確かに飛鷹がいる。
「ハハッ」
「っ! 」
動きがとろい。フェイントだのかける以前に少し避ければあっさりと抜けた。
「これでよくオーストラリア勝てたなぁー」
先日の勝利は奇跡の巡り合わせによるものだったんだろうか。
校門に辿り着き、振り返ってみるともう追いつけないと諦めた不動がこっちを睨んでいた。
「バ、イ、バ、イ」
口パクでも伝わるようわざと大袈裟に口を開けて言った。ついでに手でも振っておこう。こうして僕は雷門中を後にした。
「にしても、暑すぎないかな」
走る速度を緩めると、ドッと汗が出てきた。夏本番はまだまだ先というのに、今の時点でこうも暑いと気が滅入る。
「この中を走り込みねぇ……」
今は良くても、誰か思わぬところで脱落するんじゃなかろうか。
***
影山が去った後、暫く場は騒然としていたが円堂と久遠監督の号令で走り込みが始まった。
俺の足はもうほとんど痛みもなく普段通りに限りなく近い状態だが、万一のことを考え練習は控えるようにとの指示を受けている。
「鬼道さん」
「どうした、久遠」
走る皆を見ていると、隣に座っていた久遠冬花が声をかけてきた。
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名無し40482号(プロフ) - 夢蜂さん» ホントですか! ありがとうございます。久しぶりに筆をとったのでお見苦しい点もあるかと思いますが、完結までまだまだこれからなので長い目で応援して頂けたらと思います(^^) (2020年11月13日 20時) (レス) id: b02fa3353c (このIDを非表示/違反報告)
夢蜂(プロフ) - 久しぶりに占ツクに帰ってきたら好きな作品に巡り会えました!更新ゆるりと待ってます!! (2020年11月13日 12時) (レス) id: e0800992ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:名無し40482号 | 作成日時:2020年10月18日 21時