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「僕のパワーが足りないのかな」
この前のニ対ニを思い浮かべた。あの時、私のシュートに信助は吹き飛ばされてしまっていたし、ヘディングとキックではどうしても力の差が出てしまう。
「ヘディングのパワーを底上げしてみる？ 」
「でもそれじゃ時間かかっちゃうよ」
私の意見に松風が懸念点を挙げた。しかもヘディングの威力を上げたからといって必殺技が絶対に形になる確証はない。
「だったら、ジャンプの脚力を活かしてみたらどうだ？ 」
「ジャンプの脚力？ 」
「キックでボールを防ぐんだ」
「あ……！ そっか、キックならいけるかも！ 」
確かに、車田先輩の言う様に今ある強みを一点に絞って活かす方が纏まりやすいだろう。
「でも、今よりもっーと高く飛ばなきゃ駄目だド？ 」
「やります、僕。絶対に高く飛んでみせます！ 」
天城先輩が手を広げて聞くが、信助の決意は硬いみたいだ。
お昼御飯を食べ終わり、私達は殆どぶっ続けで特訓を続けていた。
「もう一度……お願いします！ 」
「ああ！ 」
「今度こそ、できるさっ……！ 」
倒れ込んだ信助を私と松風が腕を引っ張り立ち上がらせる。
「諦めるもんか、なんとかなるっていつも天馬が言ってるだろ」
「うん……！ 」
もう一度。私は何度繰り返されたか分からない強めのパスを蹴り上げた。先輩達も信助へのマークを緩めずに競り合う。
「諦める……もんかァ！ 」
一瞬できた隙を見逃さず信助が飛んだ。力いっぱいに踏み込んで、ボールの最高点を追い越す。両足で踏みつける様に蹴り落とされたボールは目を見張る威力を纏っていて、松風を追い越し向かい側のゴールネットを揺らした。
「ぃヤッタァーー！ 」
「出来たな、信助！ 」
「今のだよ！ 」
信助は脱力してグラウンドにへたり込む。
「ああ！ とうとう出来たド」
「凄いよ、凄い必殺技だよ！ 」
「……うん！ 今度こそ本当にできた！ 」
「ありがとうこざいました！ 」
「全く。何度失敗してもやめねえんだからな」
「天馬がもう一人いるのかと思ったド」
松風と信助が両手を握り合って喜ぶ様子を、先輩達は言葉ではそう言いながらも優しく見守ってくれていた。
「しかし強烈なキックだった。あれを蹴りこまれたら、俺だって防げないかもな」
「そ、それって、必殺シュートだよね？ 」
「必殺シュート……」
「そうだよ！ 私も負けてらんないなぁ……！ 」
「ぶっとびジャンプは、シュートか……！ うん！ 」
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作者名：やに | 作成日時：2022年8月26日 1時
