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公衆トイレでユニフォームに着替え、早速特訓に参加する。
「典子と俺で信助へのパスを出すぞ。その後車田と天城が妨害するから、抜け出してボールに飛び付くんだ。松風は信助のヘディングが成功したらそのボールを前に持っていくカウンター想定の動きをしてみろ」
人数が増えるとシチュエーションを想像しながら動けるのはいいのだが、
「うわっ！ 」
「次！ 」
車田先輩と天城先輩が囲むと一気に対応できなくなる。私と三国先輩どちらがパスを出すかは直前まで分からないからタイミングも掴み難いし、ヘディングを前線に飛ばすという仕事が増えた為に意識が散漫になっていた。
「信助！ 」
「わっ、とっと」
「動きがトロい！ 」
ボールばかり見ていると車田先輩からお叱りのタックルが飛んでくる。天城先輩の妨害から逃げている間に私や三国先輩が上げたパスは地面に落ちる。
「駄目だー……うまく行かない」
「信助、大丈夫？ 」
松風が心配そうに仰向けに転がった信助の顔を覗いた。五人を一人で相手にしているのだから疲れやすいのは当然だった。
「少し休憩しようか」
「まだいけます！ お願いします！ 」
「よし、分かった」
信助に手を貸して起き上がらせると、その時丁度土手の方から見覚えのある人物が二人現れる。葵ちゃんと秋ちゃんだ。
「天馬ー！ しーんすけー！ ランチタイムだよー！ 」
松風が手を合わせると、私達も両手を揃える。目の前には重箱があって、これでもかと敷き詰められた唐揚げやおにぎりを見ているとお腹が鳴った。
「いただきまーす！ 」
梅が入ったおにぎりを一口齧る。美味しい、と言うと松風が自慢げに口角を上げた。
「でしょ」
「天馬が言ってた秋姉の味、ってやつだな？ 」
「はい！ 」
「へ？ なんか言った？ 」
「いや、皆美味しいって！ 」
「そう、多めに持ってきて良かったわ。いっぱい食べてね」
「は、はい」
秋ちゃんが微笑むと三国先輩が頬を染める。え、まさか。ニヤつく顔を隠す為私は葵ちゃんに取って貰ったおかずへと手を伸ばした。
「どお？ 必殺技はできそう？ 」
「いえ、まだ上手く行かなくて」
「信助のジャンプとヘディングが中々噛み合わなくてさ」
「ジャンプとヘディングか……、二つは欲張りかもね？ 」
「欲張り？ どっちか一つにするって事？ 」
「行き詰まったらシンプルに考えてみるといいかなって、思っただけよ」
「シンプルにか」
「ヘディングだと、シュートの威力に負けちまうんだよな」
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作者名：やに | 作成日時：2022年8月26日 1時
