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カラマトゥは一松を背負い、聖域まで歩いた。
聖域の中に入ると、辺りに潜んでいた妖気も消え去り、二人の気配だけとなる。
聖域の中には、カラマトゥの許す者以外何人たりとも入れないせいで、
今此の中には、カラマトゥと一松の二人しかいないのだ。
“…うわ、諸に二人きり……”
なんて意識するのはシスターである。
優しい吸血鬼に対して、若干の好意を持ちつつあるらしいが、それに未だ気付けずにいるのはシスターが若いせいだろう。
聖域の奥に奥にと進んで行くと、一つの屋敷が現れた。
元々は他の者の所有する屋敷だったのか…表札の名前はカラマトゥのモノではなかった。
中に入ると、一瞬にして部屋中のランプに明かりが灯る。
外は暗かったのに急にこんなに明るくなった為、一松は思わず、眩しそうに目を細めた。
カラマトゥは一松を、屋敷の奥まで連れて行った。
そして、廊下の突き当たりの部屋に入る。
その部屋には真ん中に大きなソファがあるだけで、あとは何もない、シンプルな部屋だった。
吸血鬼は一松をソファに座らせると、「何か飲むか?」と微笑み、訊いた。
一「え…あ……じゃあ、紅茶…」
カ「OK、用意させよう」
指を鳴らせば、先程の蝙蝠がまた現れた。
どうやらこの蝙蝠は、カラマトゥが思う所なら何処にでも現れるらしい。
カ「客人に、紅茶を」
とだけ言うと、蝙蝠はパタパタと小さな羽を動かし飛び、数分後ティーポットとカップを持って戻ってきた。
どうやらポットの中には、もう紅茶が入っているらしい。
其れを受け取ると、カラマトゥは慣れた手つきで紅茶を注ぎ、「どうぞ」とシスターに手渡した。
一松はゆっくりとした動作で其れを受け取ると、口に運ぶ。
最初こそは「あちッ」と舌を火傷していたものの、その内に冷めてきたのか普通に飲めるようになっていった。
一「あったまる……」
カ「そうか?なら良かった」
ほぅ、と安心したように柔らかく息を吐く一松に、カラマトゥはにこりと微笑んだ。
口には出さなかったが、吸血鬼は元気のないこのシスターを心配していたのだ。
一松は紅茶を半分まで飲み終えると、口を開いた。
過去の事を話す決心が、ようやくついたようだった。
カラマトゥは一松の横に座り、その話を静かに聴いた。
その過去は…普通の人間には無い、だいぶ変わったものだった。
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おそ松さんgirl(プロフ) - みくさん» ありがとう!頑張る!! (2018年6月3日 23時) (レス) id: 1f58a69c9c (このIDを非表示/違反報告)
みく(プロフ) - 面白いよ!更新頑張ってね! (2018年6月3日 23時) (レス) id: 7f167612e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:松壱 | 作成日時:2018年5月20日 12時