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ちらりと周りを見回すと、煌びやかな男性の隣で楽しげに何かを話す若めの女性や、落ち着いた表情でお酒を飲みながらホストと雑談を繰り広げる女性たちで溢れている。
「センラさんは、何でホストクラブに?」
「俺?うーん、気分転換かな」
私の質問に首を傾げたセンラさんは、何かを考えるように顎に手を当てながら私の質問に答えた。想像以上に軽い回答にクスッと小さく笑みを零してしまう。
「そっか。」
くすくすと笑いを堪える私の様子に呆気に取られているセンラさんは「??」と疑問符を頭上に浮かべながら切れ長の瞳をぱちぱちと瞬かせた。
「ふふっ、次回はセンラさん指名しようかな」
「お、また来てくれるん?」
「もちろん。時間がある時に来ようかな」
これは社交辞令ではなく私の本音だ。愛と憎悪が混じり合うこの空間は様々な“愛”が金銭によって造り上げられている。最も単純で分かり易くて愛という海に溺れることができる空間。
本音は心の奥に仕舞い込んで、カクテルの酔いに任せて醒めることのない甘い夢を魅せてくれる場所。
「私、センラさんのこと結構好き」
「ほんま?嬉しいわあ」
挨拶のように、愛の言葉が簡単に飛び交う。私の言葉に綺麗に微笑んだセンラさんからは本音という温かみを感じない。それは私も同様だった。
「Aちゃんは高校卒業後は大学行ったん?」
「うん。今は接客業に勤めてるよ」
「接客かあ。かっこええなぁ」
尊敬するように目線を向けたセンラさんもホストなのだから接客業なのに。と再び笑ってしまいそうになる。必死に頬の震えを堪えながらにこにこと笑顔を浮かべていると「せや、俺も接客業やん」とセンラさん自身が自分にツッコミを入れた。
「ふふっ、言わない方がいいかなって」
「そこはツッコミ入れてや」
何かに溺れる音がする。片足から重力に従い下へ下へと落ちていく。終わりのない愛と欲望のプールに溺れていく感覚に自然と心地の良さを覚えた。
「_______お待たせしました、お姫様。」
ふわりと甘酸っぱいグレープフルーツの香りに包まれたかと思えば、私の眼前には赤色が広がっていた。林檎のように澄んでいて透明の赤色。数コンマ置いてからそれが坂田くんであることに気が付いた。
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らむ(プロフ) - みさきさん» みさき様 コメントありがとうございます!更新速度は遅くなるかもしれませんが、完結までお付き合いいただけると嬉しいです✿ (2022年9月19日 12時) (レス) @page44 id: 246795febf (このIDを非表示/違反報告)
みさき - 頑張ってください! (2022年7月27日 0時) (レス) @page39 id: 734386537b (このIDを非表示/違反報告)
らむ(プロフ) - アヒルさん» アヒル様 コメントありがとうございます。楽しんでいただけて何よりでございます✿今後もどうぞ宜しくお願いいたします。 (2022年7月2日 9時) (レス) @page19 id: 246795febf (このIDを非表示/違反報告)
アヒル - らむさん、やばいです。 めちゃくちゃ好きすぎて、友達にすすめちゃいましたww これからも、頑張ってください! (2022年7月2日 6時) (レス) @page1 id: f44091270b (このIDを非表示/違反報告)
らむ(プロフ) - 翔さん» 翔様 コメントありがとうございます!当方の単なる妄想話にも関わらず、翔様に楽しんでいただけて嬉しい限りでございます。原曲もとても素敵な曲ですよね🌷今後も更新を続けてまいりますので、息抜きの際にでも是非お楽しみくださいませ。 (2022年6月30日 0時) (レス) @page11 id: 246795febf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らむ | 作成日時:2022年6月27日 10時