第2話 ページ4
｢なんで突然止まったんですか･･･｣
額を擦りながら言うとジョナサン様が振り返って、
｢･･･いつになったらミッシェルは敬語をやめるんだい？｣
｢私とジョナサン様は召使いと主人の関係でございます。敬語をやめることは出来ませんと何回も申しております｣
ジョナサン様は歳の近い私を友人のように扱われるが、いくら親しくしていようが召使いの私はジョナサン様を呼び捨てになどしてはいけないのだ。
｢んー･･･けどやっぱりかたっくるしいよ！｣
｢けど決まりですので･･･｣
とかなんとかあーだこーだ言っているうちに、かなり時間が経っていたらしくもう夕方になってしまっていた。
｢それじゃあ今度のボクシングで僕が優勝したら僕のこと呼び捨てね！いいだろ？｣
｢勝手に決めないでください･･･ダメなものはダメですよ！あまり親しくしているとめんどくさいことになります！｣
｢めんどくさいことってどんななんだい？｣
ジョナサン様は召使いの暗黙のルールを知らなかったらしく、素朴な疑問を聞いてきた。
召使いの暗黙のルールその1、主人と必要以上仲良くならないこと。これを守らねば私の召使い平穏生活は終わってしまう。
｢それは･･･あれですよ、例えばあのメイドにだけ贔屓しているとか･･･簡単に言えば嫉妬ですよ｣
｢大丈夫だよ！ミッシェルは神経が結構図太いじゃないか！｣
｢それ褒めてませんよ･･･｣
｢あっ！もうこんな時間っ！父さんに呼ばれていたの忘れてた！それじゃあミッシェル！約束忘れないでよ！｣
そのままジョナサン様は走って行ってしまった。
｢えっ！だから勝手に決めないでください！お待ちくださいジョナサン様！｣
慌てて止めようとするが、ジョナサン様の足はやはり早く、追いつけなかった。
｢･･･もしも、ジョナサン様が本当に勝って、私が敬語抜きにしなくちゃいけなくなったら･･･｣
『ほら･･･あれよ、あの子よ！ジョナサン様に色目使って気に入られた女！』
『えぇ･･･ていうか全然可愛くないじゃない』
『やーねぇ、そこまでしてお金欲しいのかしら』
｢･･･やっぱりダメだ｣
想像出来るのがいじめられる未来しかない。
メイド仲間から。
今でさえ若干冷たい目で見られているというのにこれ以上になったらたまったもんじゃない。
｢ジョナサン様が勝たないことを祈っておこう･･･｣
私もゆっくりとジョースター家に帰ることにした。
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作者名：柿ピー | 作成日時：2018年4月15日 19時
