おはよう【牛島若利】 (ページ13)

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勝ち目がない。

赤髪野郎から言われたことが頭から離れない。

｢じゃあ、気をつけてね｣

｢うん、また明日｣

部活が終わる頃には外は暗くなっていた。

女子高生が一人暗い道を歩くとなると誰もが危険だと思う。

それが由利のようなかわいい女子なら男子たちは何とかしてあげたいと思うのではないだろうか。

なんて考えていると、案の定男子バレー部員が由利のところに行って家まで送ると言う。

モテる女子はやはり違う。

もし、恋のライバルが由利だったら私は戦う前から負けだと判断すると思う。

凛桜さんは由利を超える美人。

誰が見ても美人と判断するほどだ。

由利でお手上げなら、私はもう白旗上げて凛桜さんと彼の恋の行方を見守った方が良いのかな？

｢今泉｣

空を仰いだ瞬間、目の前に彼の顔が現れる。

｢わあ！？｣

心臓に悪い。不意打ちすぎる。

｢な、何の用ですか？｣

少し距離を置き尋ねるも、ドキドキは一向に収まる気配がない。

ちらりと彼の方を見るが、逆光で顔が見えない。

まあ、見えたとしてもきっと変わらず無表情なんだろうけどね。

｢家まで送る｣

家まで、送る？

｢いや、いいよ！私帰りバスだし｣

｢……そうか。じゃあ、気をつけて帰れよ｣

そう言って離れていく彼を見てた。

あまりの呆気なさに見てるのが辛くなり、すぐにバス停まで歩いた。

バス停まで徒歩数分。

そこから家の近くまでのバス停から家まで、徒歩二十分。

バス停から家までが結構暗くて細道もあったりして、私なんか襲われる対象じゃないと分かっていてもちょっと怖いと感じる。

だから、彼がほんとに家まで送ってくれたらすごく嬉しいんだけど、私にはあそこで頼ってしまう可愛さがない。

｢由利に言ったら怒られるな～｣

誰もいないバス停で一人ボヤき、再び空を仰ぐとまたしても彼の顔が現れる。

｢わあ！？｣

咄嗟に離れ見ると、今度は自転車を持っている。

｢乗れ。家まで送る｣

｢でも、私バスで……｣

｢乗れ。こっちの方が金がかからないし、俺も良い運動になる｣

彼に促されるままに後ろに座り、彼にしっかり捕まってみる。

大きくて鍛えられた背中。

夜の風が肌に触れるとともに、彼の汗の残り香がする。

こんなことをされたら、いくら勝ち目がなくても、私は彼を諦められない。

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