男 女 逆 転 け ん か っ ぷ る

♀けんかっぷる7♀ ページ9

▼



　
「 …おーい、風呂出たぞ。 」
『 …わかったー…っていうか、なる顔真っ赤だし、髪濡れてる… 』


首にタオルを軽く巻いて、部屋に入ってくるなる。いつもより少し入浴時間が長いとは思ったけど、ちょっと逆上せているように見える。それに髪だって、乾かさないといくらバカ(なる)でも風邪を引いてしまう。


　
『 なる、髪乾かしてあげるから、ちょっとこっち来て。 』
「 …ん。 」


そういって手招きをすると、私の目の前にちょこんと座るなる。…ずいぶんと素直。ただ単に髪を乾かすのが面倒くさいのか逆上せているせい、のどっちかだと思うけど。

そんなことを考えながら、軽くわしゃわしゃとタオルで頭を拭いてあげる。その度にシャンプーのいい香りがして、なるって本当に男なの ？ と疑いたくなるくらいだ。


　

『 …じゃあ、乾かすよ。 』


軽く水気をとったら、次はドライヤーで丁寧に髪を乾かしていく。

…というのもなるの髪は女の私からしても、綺麗な髪だと思う。だから、綺麗ななるの髪を傷つけたくないのだ。勿論、本人にもせっかくの自分の髪をもっと大切に扱ってほしかったりする。




「 ……。 」
『 …わっ…ちょ、いきなり何々 ？ 』


少しして髪を乾かし終わって、ドライヤーを片付けようとしたとき、真正面から ぎゅっ となるに抱きつかれる。

当然、いきなり抱きつかれたら私も困惑するわけで、引き離すことも抱き締めることもできず、ただ呆然としていた。



　
『 …あの…なる ？
私、お風呂はいんないと……。 』
「 …やだ。明日にして。 」


こうなってしまうと、もうなるの言うことを聞く以外の選択はない。珍しく甘えたいみたいだ。

私の胸に顔を埋めて、ぐりぐり とマーキングのように頭を擦りつける。その様子はまるで猫だ。いつもは素直じゃないくせに人一番甘え上手ななるせ猫。



　

「 …好き。……俺以外の男と付き合わないで。バカ。 」
『 …わかってるし、なるのバカ。 』


唐突な彼の甘い言葉に、顔へ少し熱が帯びていく。そんな私の様子はお構い無しで、ぎゅっ と抱き付いたまま離れないなるせ猫。


　

＿＿＿今夜は寝させてもらえるのだろうか。

♂けんかっぷる8♂→←♂けんかっぷる6♂

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す