幼馴染 【染谷勇次郎】

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(勇次郎side)





【どっちがAを楽しませられるか勝負】





芸能界の先輩がファンを楽しませることが大切だと言っていたことから『僕の方が出来る』『俺だろ』と言い合いに発展。



共通の友人であるAに決めてもらえばいいのではないかとなっているわけだけれど。





愛蔵に負けるのなんか何がなんでも嫌だと思っていた。



さっきまでは。



さっきまでは、ただそれだけだった。



いつもと違うようにして、どうにかして、僕の方に票を入れてもらおうと。



甘い物好きっぽいAにとりあえず甘い物食べさせて後はどこかへ遊びに行こうと。



けれど







『ち、違うじゃん？ていうかないじゃん？だからこういうのやめよ？』







僕は別に、カレカノだと勘違いされても良かった。



何でそう思ったかなんて、咄嗟にそう感じたのだから知らないし分からない。





僕はそうでも、Aは違った。







『違うじゃん？』







確かに、僕とAはカレカノではない。



ではない、けれど







『ていうかないじゃん？』







A的には僕と“そういう”関係になることはない。





はっきり言われたからなのだろうか。



……なんだか、無性に腹が立った。



『なんで？』と疑問形で返したのに返事をせずに僕から視線そらして。





…せめて、僕を見ろよ





バッと勢いよく振り向いたAの頬は、何故かほんのり紅(あか)らんでいた。





A的に僕が“ない”なら、



この紅らんだ顔もいつか、僕以外の人間が見るのだろう。





というかそれ以前に、Aに今彼氏がいるのかどうかすら、僕は知らない。



Aの学校生活や普段の生活を、僕は全く知らないのだから。





何にイラついているのか分からない。



けれどA関係で何かにイラついていることだけは確かだった。




　

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