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「貴方だって強くなければ今捕まって売られてしまうかもしれないの。そんな世界よ"ここは"」
「そうなのか....」
一層寒くなる話題だ。
口から白い息が出ては暗闇にもみ消されていく。
「もしここから出られたなら、君は何をしたい?」
なんとなくそんな質問を投げかけてみた。
彼女に少し興味が湧いたから。
「そうね....もっと広い世界を見てみたいわ」
彼女の悲しげな表情を見てしまった。
見たことのない世界に憧れる様はとても美しく同時に尊敬の念を抱いた。
「そしたら死んでも構わない」
「他には?」
「ん?他には....そうね」
一瞬だけとっても静かな風が吹き、寒さで震えた。船が唸り改めて夜の海の恐ろしさを思い知る。
しかし、彼女は寒いそぶりを全く見せずにこういうのだ。
「私は。普通に大人になって、普通に結婚して、普通に子どもを育てて、普通に歳をとって、普通に死にたい。それだけで十分かな」
薄い笑顔が鉄格子の隙間から見えた。
小さく咲く花は誰かに看取られることなく、静かに生涯を終える。
彼女はまるで花のようだが、それはとても小さかった。
「本当にそれが願いなの?」
「ええ。欲があまりないでしょ?」
「.........」
Aは冗談を言って笑った。
スティーブンは笑えなかった。
そんな時ある事を思いついた。
叶えてあげたい。その気持ちが何故か高まってしまった。
「なら僕が」
彼女の笑いこえを遮るようにして声を出した。
大きな瞳と目が合って時間が止まる。
「僕が......君を買う!ちゃんと働いて稼いでそしたら自由になれるさ!」
約
束
だ
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作者名:ミクロ | 作成日時:2017年11月21日 19時