ただ・・・好きなだけ。 (ページ3)

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聖川真斗ページ3

「まさと、はいるよー」

そうかんけつに私は彼に扉の前でいうと中からは、「はい」という返事が聞こえた。

それを聞くと、私は

「失礼します。」

といって、横開きの戸を開けた。

中に入ると、草原にいるような畳と書道特有の墨汁の香りが、私の中に入ってくる。

部屋の真ん中には、とても嬉しそうなまさとの姿があった。

少しだけふわりと彼は笑い、しんのある堂々とした声で彼は、

「お前が来るのを待っていた。」

と、言った。

私がいつもまさとの部屋に行くと、いつも彼はそう言ってくれる。

私は、彼のこの言葉が大好きだ。そして、私は彼に心なしかひかれていった。

7月の終わり。町の洋服店には浴衣や水着が並び、大通りの方を歩いていくと屋台が

明日のために、たくさん立ち並んでいた。

明日は、私の住んでいる街で、祭りが開かれる。

だが、私は彼を誘えない。いや、正しく言うと誘う勇気がない。

可愛い浴衣も、私一人では着れない。それにまさとは、アイドルとしての活動もあるから。

そう言って、まさとを言い訳にしてまさとに会うことさえも逃げていた。

そして当日の晩。私は家の中で、行くか行かないか一人悶々と迷っていた。

友だちは、彼氏といくそうだし、私は、今遠くの学校に通うため、一人暮らし。

どうしようか迷っていると、私の携帯から音楽が鳴り始めた。

まさとからの電話だ。少し戸惑いながらも電話に出たら受話器からは、

とてつもなく焦った彼の声が私の耳の中に響き渡った。

「A。いまどこにいる」

少し焦りながらも私は、「家だよ・・・？」

と、答えるとすぐにそこに行く。

と、彼は言ってから珍しく一方的に電話を切った。

そしてすぐに彼が家に来て、流れるように浴衣を渡され、彼のメイドさんに

着替えさせられ、家を出たと思ったら、まさとに手を引かれ、どこかの建物の屋上に来ていた。

そして、その屋上の真ん中らへんに彼は座り「ここに来い。」と、言った。

私は隣に座った。

「ここは俺の特等席で、小さいころからは、よくここで花火を見ていた。なあ、A。今日は俺と一緒に花火を見てくれないか。」

彼は顔を赤らめながら言った。

――私の中にあるもやもやが、はっきりとした、思いとなった。――