winter136 勿忘草 ページ39
★オビside
それから＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
それから俺たちは、一日一日を大切に過ごした。
一緒にパンケーキを焼いて、
お茶会をして、庭で雪だるまを作って、
図書室で本を読んで、カードゲームをして………
皆が怖がるといけないからって、城下には遊びに行けなかったけれど、今まで生きてきた中で一番幸せな時間だった。
だけど……
“幸せ”には対価がつくようで
A嬢は、日に日に花に命を奪われていった。
『オビ…ごめんなさい。
雪合戦、できそうにないの…
…昨日、約束したのに…』
やがてA嬢は動けなくなってしまった。
足に力が入らないらしい。
ベッドの上に横たわる彼女は、
今にも消えてしまいそうなくらい儚かった。
オビ「…ううん、俺は平気だよ。
実は、あんたのために素敵な小話をいくつか持ってきたんだ。
聞いてくれるかい？」
弱っていく彼女を見ているのは辛かった。
何もできない自分が情けなかった。
だけど、彼女の方が俺の何倍も辛く苦しいことを、知っていた。
だから無理にでも笑った。
“笑っていればどんな辛いことも乗り越えられる”
そんな綺麗ごとのような言葉を信じて。
・
・
『じゃあ、私のお願いを聞いてくれる？』
罰ゲームありのカードゲームで、
俺の負けが決定した瞬間目を輝かせるA嬢。
頷くと、彼女はゆっくりと口を開く。
『私が果てる時、体から一輪の花が咲くことは知ってるでしょう』
オビ「ああ、それがどうかしたの？」
『あなたに持っていて欲しいの』
それは、今A嬢の体から咲いているどの花よりも美しく、永遠に枯れない花。
オビ「本当に、俺でいいのかい？」
『ええ、あなたじゃなきゃ嫌』
悪戯に微笑むと、その小さな手で頬を撫でてきた。
『私のこと、忘れないでね』
オビ「忘れられるわけないだろ」
たとえ、どんなに忘れたくても無理だ。
その真っすぐな瞳も
ふわふわした髪も
よく弧を描く唇も
俺の名前を呼ぶ声も
細長い指先も
優しい香りも
彼女のすべてが離れない。
脳裏に焼き付いて離れないんだ。
『…キスしてもいい？』
オビ「いつでも」
もう何度目かわからないキスを交わした。
・
winter137 死の誘い→←winter135 刻一刻と
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ルルコ - 大・号・泣！！ ほんとにタイトル通り涙の雨です！それも大雨！最後の宝探し(手紙とお花)なんて神ですね！別の意味でさらに感動しました (2021年12月15日 1時) (
レス) @page50 id: 71a021f1b6 (このIDを非表示/違反報告)
purupru(プロフ) - はまってしまい、一気に読みました。涙雨3に入ってからは涙がでて止まりませんでした。更新再開を楽しみにしてます^ ^ (2018年11月6日 20時) (レス) id: bc972e56cf (このIDを非表示/違反報告)
れ - 一気に読んでしまいました。涙がとまりません。また、物語がスタートするの待ってます。 (2018年10月13日 17時) (レス) id: 3522cc0a39 (このIDを非表示/違反報告)
かりそめの蘇生(プロフ) - 更新再開してくれて嬉しいです！完結まで楽しみにしてます！ (2018年6月3日 7時) (レス) id: 4709ebaabe (このIDを非表示/違反報告)
マリモ - クラリネスで涙花病の薬つくってほしい (2018年5月15日 14時) (レス) id: 1e69e1c4b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミミネコ | 作成日時：2016年12月9日 20時
