あなたの悩みはカクテルの味 【ジョジョの奇妙な冒険】

顔のない貴方とライラ ページ8

11月22日ーーーと黒板に明日の日付を書き込む。

「さて、今日はもう帰るか……」

　私の名前は川尻浩作ーーなんの特徴もない、どこにでもいるような一般人。仕事は、とある学校の教職員をしているが、生徒に教えているわけでもない。ただの事務担当。

(なぜ、私が関係ないクラスの仕事をしないといけないんだ)

　このクラスは私の受け持っているクラスでもなんでもない。しかし、なぜかここの担任から仕事を押し付けられた。

(日直を書き換えたり、日誌を書き込んだり、日付を変えたりすることはそんなに面倒なのだろうか)

　いつもそうだ。

　昔から面倒ごとを押し付けられやすくて、頼まれたら断れない性格だった。そのせいか、帰る時間も日に日に遅くなり、今では事務の仕事が早く終わっても違う人の仕事をしていて、結局誰よりも帰るのが遅くなることも多くなった。

　妻と子との家族の時間も次第に少なくなった、それに、子供は妻に似て何を考えているのかもわからない。流行について行けないせいで話題もなかった。

　帰っても夜ご飯はカップラーメンやらなんやらが置いてあるだけで、妻の手作りの料理も、もう何週間と食べてはいなかった。

　はぁ、と一人、誰もいない教室でため息をつく。

「先生、元気ないですね」

　ふと、後ろから声をかけられた。

　誰もいないと思っていたこともあり、驚いて振り向けば、窓際の席に一人、女子生徒が座っていた。

　あんなところに座っていたのに、なぜ私は気づかなかったのだろうか。

「……あれ？聞こえてますか？」

　私が何も言わなかったからだろうか、生徒はもう一度私に声をかけて来た。

「あ、いや、聞こえてるよ。全然気がつかなかったから驚いているんだ」

「あぁ〜……よく言われるんですよね、影がうすいって。で、えっと川尻先生……ですよね？あってます？」

　私は頷く。

「で、先生。何か悩み事でもあるんですか？ずいぶん暗い顔ですが」

　……そんなに顔に出ているのだろうか…？

　その時、その生徒が「……あ、」と声をあげた。

　目線の先には黒板がある。

「明日って、いい夫婦の日じゃないですか」

「え？」

　もう一度、黒板の明日の日付を見る。確かにそうだ11月22日ーーーーいい夫婦の日。全く気がつかなかった……がしかし、

(今の私達には程遠いな)

「先生は奥さんいるんですか」

「……いるよ。とっても可愛い人だ」

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