私の戦い方 ページ35
手合わせをするための理由というのに、割と単純に左近が乗ってくれた。不安になるくらいちょろいが大丈夫か。言葉にはしないがAは思った。
「じゃあいきますよー!」
「どうぞ」
左近が双刀を構える。Aも、片足を後ろに引く。扇子の親骨を軽く握った。
瞬間、刃が擦れる鈍い音が響き渡る。
(ほう、これはなかなか)
扇子を握る手に力が篭る。双刀だったからか、単純に左近が強かったのか、手が震えた。
「すげー!受け止めた!」
左近は目の前で起きていることに目を輝かせる。いつもどおりだな、とAはふう、と息を吐く。左の脇腹に勢いよく、長い脚が迫っている。いつだったか、左近が何処かのがたいのいい男達に絡まれていたのを思い出す。その時、こんな戦い方をしていた気がする。
Aは蹴りを避けると、左近の軸脚を叩こうとする。
だが追撃が迫っていたことに気づいたAは思わず後ずさった。
体制を立て直すと、Aは軽く地面を蹴る。体を低く、扇子を勢いよく振りかぶると、そのまま左近の胴体を狙う。
「わわっ」
寸前のところで左近が避ける。態度だけじゃなく、身のこなしも軽いなとAは思った。右脚で蹴りを入れると、左近は少し先まで吹っ飛んだ。
「姫さん、結構容赦ないっすねー」
頭を掻きながら左近が笑った。Aは首を縦に振る。
「これが私の戦い方ですので」
閉じられていた扇子の扇面が露わになる。先端の刃が、行儀よく並んでいた。
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鶯餅(プロフ) - コメント有難う御座います!これからも更新頑張ります! (2018年5月29日 18時) (レス) id: d3725be283 (このIDを非表示/違反報告)
朔夜 - 楽しく読ませて頂いてます!更新頑張って下さい!^ ^ (2018年5月29日 14時) (レス) id: df783c30d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鶯餅 | 作成日時:2018年5月2日 22時