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赤い椿 ページ29

またあの夢を見た。
Aは考える。自分はまだあの記憶を引きずって生きている。
(何を今更)
それが記憶だと言えるのは、Aの脳に出来事が断片的にいくつか貼り付いていること、本当に思い出したくないことがわかっているからだろう。
(阿呆らしい)
朝から気分が悪い。髪を櫛で梳きながら、Aは溜息をついた。

◆◇◆◇

「あの娘が気掛かりか」
後ろから突然声をかけられて、椿の肩がびくりと跳ねた。
「…刑部様でしたか」
「そんなに驚かずともよかろ」
ちょっと不満そうな刑部に、椿は誤って続けた。

「気掛かりではないと言えば嘘になります」
いくら有能な忍であっても、妖術でも使わない限り人の心の奥深くまでは見ることはできない。たとえそれが主であってもだ。
「姫様は城を任されたことしか知っていなかったのですから、今この状況で動揺していないとは言い切れません」
「そうか」
刑部が納得したように頷いた。

「……それにしても」
刑部は椿をまじまじと見つめる。
「ヒヒ、ぬしもこれまた派手に暴れたものよなァ」
面白いとでも言いたげに、返り血で銀色の髪を赤く染めた椿を見て笑った。
「なっ…!あれだけ敵がいればこれは仕方ありません!」
余裕で敵の鼻をへし折りながら、よく言うものである。
「戦場の影に咲く赤、まさにぬしは椿よ」
「笑われているのか褒められているのかわかりません!」
「どちらもよ」
「……」
この人は人をからかうのが上手だと椿は思う。椿がよくからかわれるのは多分、もとからの性格の所為だろうか。素直で、身内には嘘がつけない。Aが、自分の兄に少し似ていると面白そうに言っていたのを思い出す。

(姫様、どうかご無事で)

椿は愛刀の鍔を撫でた。

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鶯餅(プロフ) - コメント有難う御座います!これからも更新頑張ります! (2018年5月29日 18時) (レス) id: d3725be283 (このIDを非表示/違反報告)
朔夜 - 楽しく読ませて頂いてます!更新頑張って下さい!^ ^ (2018年5月29日 14時) (レス) id: df783c30d2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鶯餅 | 作成日時:2018年5月2日 22時

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