好き ページ26
「そっか、無事で良かった」
桜が安心した様子で言った。ここはAの自室で、敷かれた布団の中でAはすやすやと穏やかに眠っている。
「姫さん、起きますか」
左近は見てないが、さっき身体を拭かれたときも、寝間着に着替えさせられたときも、Aはずっと寝ていたのだ。
「だいじょぶだいじょぶ。最近何かと忙しかったし、ちょっと疲れちゃったんだよ。明日朝起きてみ、絶対姫様起きてるよ」
「ならいいんすけど…」
今回ばかりは、左近も心配そうにAをじっと見ている。
「…………きっと衝撃が強すぎたんだろうね。姫様、家康のことずっと信じてたんだろうから」
「そうっすね」
薄い灯りで、部屋は橙色に染まっている。
『………』
沈黙に耐えきれなくなったのか、桜が口を開く。
「あ、そういえば左近ちゃん、夕餉食べた？」
拍子抜けしたような顔で、左近が返事する。
「え？いや、まだっすけど……」
「私もまだだからさ、お握り食べよ」
「え?はい……」
というわけで、夕餉を食べている。最初は訳がわからなかった左近も、桜なりの元気づけ方なんだろうな、と思うことにした。
「っていうかさぁ」
お茶を一口飲み込んで、桜が唇を尖らせる。
「ぜーったい左近ちゃん姫様のこと好きでしょ?じれったいからもっといちゃついてよ」
顔を真っ赤にして、左近が黙り込む。図星だな、これは。
「お？当たりかな？」
面白くなってきたとばかりに、桜がにやけた。
左近はぷるぷる震えている。
「だーっ！！もう!!」
こうなったらやけくそだ、とばかりに左近が語り始める。桜は腹を抱えて笑い出しそうなのをこらえる準備をし始めた。
「だって可愛いんですもん!!あんないい人どこ探しても見つかんないでしょ!!」
「つまり好きなんだな!？」
「大好きです!!!」
「正直でよろしい!!もうお嫁にもらっちゃえよ!!」
「いやそんなこと言ったら三成様にぶっ殺されますよ!!」
「うわあそれはぶっ殺される!!」
「妹を嫁にください」なんて三成に言おうものなら。その先を考えるのが、桜は怖くてたまらなかった。
「話は聞かせてもらったぞ」
見上げると牡丹が天井からぶら下がっていた。
「面白そうだな私も混ぜろ!」
牡丹が参戦した。
話はまだまだ続く。夜は深くなっていく。
「もう想い伝えちゃったらいいじゃん!」
「恥ずかしいですもん!!」
「『す』と『き』だけだろ頑張れよ左近」
「恥ずかしいですもん!」
こうして、夜は更けていった。
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鶯餅(プロフ) - コメント有難う御座います！これからも更新頑張ります! (2018年5月29日 18時) (
レス) id: d3725be283 (このIDを非表示/違反報告)
朔夜 - 楽しく読ませて頂いてます！更新頑張って下さい!^ ^ (2018年5月29日 14時) (レス) id: df783c30d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鶯餅 | 作成日時：2018年5月2日 22時
