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凶星 ページ25

「左近…ですか?」
Aに目立った外傷はなく、そこでひとまず左近はほっとした。
長い前髪に隠れて、Aの目は見れない。泣いているのか、怒っているのか。理解しようとも思わなかった。
「姫さん、なんでこんなこと」
「私は…」

なんでこんなことになっている。自分でもわからないくらい、私は混乱している。Aは言葉が出なかった。口の中が乾いて、うまく喋れそうにない。

「………家康さんが裏切ったなんて信じたくありません」
辛うじて絞り出すことができた言葉は、さっさと消えてしまった。左近は黙って、Aの次の言葉を待っていた。少し落ち着くことができそうだ。

「………人に裏切られたくないです」
「はい」
左近はしゃがみ込んで、Aの小さくて細い手を握った。Aは何も言わなかった。
「もう大丈夫っすから」
今更難しい言葉も同情も憐れみもいらない。左近はそう思った。
「生きてて良かった」
憔悴しきった表情のAの頬には、細く血が流れた跡と、乾いた涙の跡が残っていた。
「牡丹さんも桜さんもすごく心配してて」
「はい」
「帰りましょ、俺達の城に」
「はい」
「それで、またいつもみたいに難しい本一緒に読みましょ」
「…はい」
その小さな心臓で、今まで何を思っていたんだろう。短い言葉に、大きな重みが感じられた。

Aの身体は力無く、左近にもたれかかる。小さく細い身体は、すっぽりと左近に収まった。柔らかいAの髪を撫でる。小さく寝息が聞こえた。

「おやすみ、姫さん」

東の空に、凶星が降る。
また姫さんが嫌いな長い夜が来るだろうなと、軽すぎるAを抱えて左近は思った。

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鶯餅(プロフ) - コメント有難う御座います!これからも更新頑張ります! (2018年5月29日 18時) (レス) id: d3725be283 (このIDを非表示/違反報告)
朔夜 - 楽しく読ませて頂いてます!更新頑張って下さい!^ ^ (2018年5月29日 14時) (レス) id: df783c30d2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鶯餅 | 作成日時:2018年5月2日 22時

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