忠告 ページ23
(何かの間違いだ)
止まりそうな足を必死に動かして考える。まだ左近から聞いただけだ、本当とは限らない。
(家康さんが裏切るはずない)
この間話したときも、今までどおり、優しい人で、人を裏切ることなんてないような顔で。
(嘘だ)
だから、家康さんが裏切るなんてありえない。
そう思った。
「…家康さん」
徳川家康、その男は目の前に現れた。
「なんだAか、吃驚したじゃないか」
「……嘘ですよね」
「？ 何がだ？」
「…家康さんが豊臣を離反したなんて」
家康の顔がわずかに曇った。Aは不安がどんどん膨らんで、確信に繋がりつつあった。
「嘘じゃない」
全身から力が抜けて、地面にへたりこみそうになるのを、Aは全力で堪えた。
「ワシは豊臣から離れる。絆の力で世を創りたい。それは豊臣にいては成すことができない」
「………だ」
自分でも聞き取れないくらい小さな声が出た。
「嘘だ」
「嘘じゃない」
何が起こっているんだ。私は今何を言っている？家康さんは何をした？ぐるぐると脳がかき回されるような感覚を覚える。
「…………本当に豊臣を離反なさったんですね」
今自分はひどい顔をしているんだろうな。Aはそう思った。Aと同じ、ひどい顔で家康が悲しそうに続ける。
「そうだ。だから」
「ここでお別れだ」
「はい。もう私は何も止めません。………ですが」
言っておくべきことがある。Aは家康と目を合わせて、はっきりと言った。
「兄を裏切った貴方を、私達は許しません。
次に会うのは戦場になります。そのときは必ず」
握った手に、爪が食い込んだが、Aは言葉をやめなかった。
「それまで創世でもなんでも、好きにやればいいです。だから」
掌に血が滲む。
「兄様がお前を殺す。徳川家康、兄と私を裏切ったお前が、生き続けられると思うな。」
自分でも恐ろしいと思えるような声が出た。
「そうだな……さよなら、A」
「さようなら、家康さん」
家康もAも、もうそれ以上何も言わなかった。
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鶯餅(プロフ) - コメント有難う御座います！これからも更新頑張ります! (2018年5月29日 18時) (
レス) id: d3725be283 (このIDを非表示/違反報告)
朔夜 - 楽しく読ませて頂いてます！更新頑張って下さい!^ ^ (2018年5月29日 14時) (レス) id: df783c30d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鶯餅 | 作成日時：2018年5月2日 22時
