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浴場 ページ16
ちゃぷん。
まだ誰も居ない浴場に、ひとつ音がした。
ここの広い浴場は、夜遅くに女中たちが芋洗い状態で入る。Aはそこそこお偉いさんなので、早い時間に入ることができるのだが。
湯船に足を突っ込むと、やはりまだ熱い。太腿まで一気に突っ込んでしまったので、急いで脚をお湯から引っこ抜いたが、熱さが指先まで駆け抜けるような感覚があった。Aは少し顔を顰めたが、今度はゆっくり、慎重に。
腹まで湯に浸かったところで、Aは肩まで一気に沈んだ。
(怠い)
真下のお湯を覗き込んだら、貧相な自分の身体が写った。
「………」
思わず黙り込む。
彼女には桜のようにさらさらした肌も、牡丹のように大きな胸も、椿のように形の整った美しい爪もない。
羨ましい、欲しいとは思わないが。
……嘘である。胸はちょっと欲しいと思っている。
今のAの身体にあるのは、見えないように、衣服で隠れるようにつけられた傷跡だけだ。
(くだらん)
そう思ったので、Aは浴場を出ることにした。
来たときと同じ様に、ちゃぷんと軽い音を立てながら。
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鶯餅(プロフ) - コメント有難う御座います！これからも更新頑張ります! (2018年5月29日 18時) (
レス) id: d3725be283 (このIDを非表示/違反報告)
朔夜 - 楽しく読ませて頂いてます！更新頑張って下さい!^ ^ (2018年5月29日 14時) (レス) id: df783c30d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鶯餅 | 作成日時：2018年5月2日 22時
