太宰の妹は光を心に灯さない−３譚−[文スト]

７７話「つめたい」 ページ7

シャワーで勢いよく水をだし

頭から水を受ける



ワイシャツと下着だけになった
肌には水の冷たさが痛いほど伝わる

服はいまはどうでも良くて
負の感情を洗い流してくれる水が

心地よくて悲しかった

ｻｧｧｧ

その痛さと冷たさが
嫌な感情や記憶を
少しでも和らげてくれるような気がした




視界がぼやける

…

鏡花が行ってしまった場所が悪かった
だって、…私の

＿＿大好きな人が行ってしまった場所だったから

今回のことは

意地悪にもあの人がいなくなった時を
深く思い出させるようで…

もうあの時の大好きな人はいない…
いなくなってしまった



鏡花の事だけではなく
あの人への悲しみも重なってしまう

その理由で泣いている事が
押しつぶされそうなほど辛い


あの人へ向けた悲しみが
まだ自分の中にあることが

…酷く腹立たしくて……





大切にしていた人が隣からいなくなる


同じように行ってしまう



ｻｧｧｧｧ

水が全身をぬらす

目に映るものが歪んだ



『＿＿＿、＿＿＿＿＿ｯ』

これなら涙が分からないでしょぅ？





いかないでよ

私の前から消えないで



幸せだった頃が夢なら…
ずっと眠らせてほしかった


今が悪夢なら

はやく夢よ 覚めてくれ…

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