【文豪ストレイドッグス】私は君で、君は君 2

56話 ページ8

「娘を軍警に引き渡せ」


「……そんなっ！」




確かにそれが妥当だろう



35人殺し、並びにマフィアの裏切り者


軍警に行こうが、マフィアに返そうが死ぬ可能性は高い


だけどマフィアよりリスクが低いのが軍警だ




「ならお前が助けるか？」


「っ……」




低く、鋭く、重い声だ




「極刑の指名手配犯でマフィアの裏切り者。その不幸を凡て肩代わりする覚悟がお前にあるか？」


「…それは」




俯くと名前を呼ばれてぱっと顔を上げる




「不幸の淵に沈む者に心を痛めるなとは云わん。だがこの界隈はあの手の不幸で溢れている」


「……」


「お前の舟は一人乗りだ。救えない者を救って乗せれば共に沈むぞ」




そう云って国木田さんは社に戻って行った





国木田さんの云い分は解る。私だって軍警に引き渡すのが正しいと思う


私は君みたいに鏡花ちゃんに共感する事も、他者の感情を考えるという事もあまり得意としていないんだ



そりゃ可哀想だとは思うが、可哀想で終わりだ


人間が一番傷付く最悪の同情しかできない




でも、君は優しいから


そこまで考えて、まるで恰も自分の事のように傷付き、悲しむんだろ？




それから、国木田さんの言葉に一つ訂正がある




「お前の舟は一人乗り……かぁ…」




この言葉に訂正を入れよう



抑も私達は不本意乍ら二人で居る


本来は一人の筈なんだけどね



君と私、二人居て大丈夫なんだ


だからこの舟は二人乗り




そこに鏡花ちゃんが入って来る


そしたら三人になってそれこそ彼が云った通り沈むだろう




でもよく思い出してくれよ


本来なら一人……敦のみだったんだ


なのに私が入って来ている




その点から行くとすれば




私が抜けるのが筋だろう？



私が舟から降りて



深い所まで溺れれば何ら問題ない



なぁ？簡単な話だろ






それに、よく考えろ



だったら何故


太宰さんは君を助けたのかを






そしたら自ずと




やるべき事が見えて来る筈だ




＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿







皆様の温かいご意見の元、作品をこのまま続行しようと思います


ご協力、並びに応援メッセージ有難う御座いました



これからもこの作品をよろしくお願いします

57話→←55話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す