【文豪ストレイドッグス】私は君で、君は君

45話 ページ47

両腕に紙袋を通して、両手で沢山積み上げられた荷物を持ち運ぶ


足元が全く見えません




「ま、まだ購うんですか？」


「落とすンじゃないよ？落としたら……」


「お…落としたら？」




此方を向いてニィッと口端を吊り上げた




「あ…あはは……」




もう腕が千切れそうだ。紐は食い込むし、足元は見えな過ぎて転けそう


そんな時だ、何故か凄く気になる雰囲気を纏った少女が横切った




「………？」




振り返ると、赤い着物を着た黒髪の少女

あちらも振り返り、目が合った



その彼女の瞳は確かに此方を見ているが、反射して何も見ていないようにも見える


何を考えているのか全く見当がつかない




その時間は長く感じたがほんの一瞬

直ぐに目を逸らされた




ドン




「え」




通行人の腕が当たり、躰が傾く




「うわわわっ！」




持ち堪えようとしたが時既に遅し

一番上の袋の中からレモンが転がる




「この給金泥棒がっ早く迎えを寄越せ！ウォウッ！？」


「あーあー」


「うわっ大丈夫ですか！」




その檸檬が何かお話ししてたおっさんの足元まで転がったようで、そのおっさんが見事にそれを踏んで転けた


手を貸そうと近付いたら、背中がわなわな震えている




「どうしてくれる！欧州職人の特別誂だぞ！」


「す、すいませんホントに……」


「ご容赦を。お怪我は？」




与謝野さんが私とおっさんの間に入り、優しい声色でおっさんの服の汚れを手で払った


そして顔を上げては先刻とはまるで違うニコッと優しい太宰さんのような笑みを見せた




「五月蝿い！」




のに、この糞男は蹴り飛ばしやがった




「女の癖に！儂を誰だと思ってる！貴様らの勤め先など電話一本で潰して……」


「女の癖に？」




あ、これはマズい


本能的にそう思うほど恐ろしい声だった




「そいつは恐れ入ったねェ。女らしくアンタの貧相な××を踏み潰して××してやろうか？」


「……ッ！」




与謝野さんが掴んだおっさんの指はメリッだとかバギッだとか良からぬ音を立てている


つ、強ーい



もう医者って何だろうとか思い始めちゃうね


慌てて落ちた荷物を拾って、与謝野さんのあとを追いかけた

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