【文豪ストレイドッグス】私は君で、君は君

1話 ページ3

ふと目が覚めた


そしたら視界に入るのは綺麗な夕陽






'





………は？



何で？

寝過ごした？



否、明日は学校が休みだから平気だけどさ




違う、そうじゃない


何か違う




私の部屋は真上に夕陽など見えない


てか室内で窓を覗く以外の方法で空が見える訳が無い




じゃあ外なのか


え、でも何で？




取り敢えず立ち上がろう





「よっ……と」





若干ふらついたが何とか耐えて二本足で立った





夕陽が差す川岸


風に靡いて揺れる綺麗な白い髪


空腹でふらつく躰


そしてボロボロの服


極め付きは





『お前など孤児院にも要らぬ！どこぞで野垂れ死んでしまえ！』



頭に流れる孤児院の院長の辛すぎる優しさと来たもんだ







'







うん、察した



詰りはあれだ、中島敦……


敦で良いか




敦に成り代わったって事だ



手も自分の意思で動くし、声だって出た




じゃあまず行うべきは






「空腹を満たす事……」





ほらね、ちゃんと出たでしょ？



よし、取り敢えず考えよう





空腹状態の敦は此の状況下に置かれたら何をするか



って、答えは判ってるけどね






川に視線を向けて流れて来るのを待つ



生きる為に財布を盗もう





何て考えていたら丁度良く



見事に脚だけが出た状態で人が流れて来た





「よしっ」





あ、可愛い



咄嗟にそう思ってから川に飛び込んだ






水中に入って、其の男の上半身に腕を回して岸に引き上げる





水を含んでいる所為か凄く重い





「はぁ、はぁ……」





岸に上げて彼を横にしたら空気を吸い込む



水中に居るのが短時間でも辛いものは辛い





それに私は休日は家で寝ている人間だった為、慣れていないというのも一理ある



運動は出来るよ？面倒なだけで





勝手に心の中で云い訳をして、横たわる彼の服を探ろうとした



が、私はふと考えた






見た所、随分と流れて来たみたいだ



そんな人の服の中に財布が残っているだろうか……





「うおっ！」





その時、男がパチっと目を覚まして腹筋だけで起き上がった


軽くホラーだ





「あ、あんた川に流されてて……大丈夫？」





男は辺りをキョロキョロ見渡して





「……助かったか…………ちぇっ」





舌打ちしやがった



何だ此奴





イケメンだったら何しても良いと思ってんのか






敦は膨大な苦労を背負ってたんだな



まだ彼の名前を聞いてないのにそんな事を思った私は悪く無いと思う

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