【銀魂】難あり波もあり

ド忘れ ページ6

ー銀時サイドー


(・・うわっ、なんか変な奴いる)



あいつに押し付けられたチケット片手に、
集合場所である公園前にやってきた俺は、
不審にうろつくAが見えた。


どうにも声がかけにくい。そういうオーラを
放っているようだ。数日前も様子がおかしかったが
割り増しで変に見える。

こりゃ関わらねー方がいいのかもと
一歩後ずさった時。






「ーーーあ、」


どうやら、気づかれたらしい。
大きいとも小さいとも言えないその瞳を
丸く開いたそいつは、ぎこちない笑みをたたえ、
遠慮がちに手を振った。






「よお、随分早ェじゃねェか」

「時間を間違えちゃって」

「お前が指定したのに？」

「・・・ド忘れってやつです」




確実に嘘だろうが、まあそんなことは
どうでもいい。今日来たのはスイーツバイキングに
出陣するためだ。貰い物のチケット。無料という
神の領域で、どれだけ多くの糖分を摂取できるかと
いうこと。





「唐突なお誘いでしたけど、来てくださって
ありがとうございます」

「ただでスイーツ食べ放題とあっちゃ、蹴る奴の方がおかしいだろ」


「あはは、さすがです」




相変わらずぎこちないことには変わりねーが、
少しずつ、いつもの会話が戻ってくる。

何となくそれに安堵しつつ、店に向かって
二人分の足音を響かせながら。





「ーーそういや、このチケットどうしたんだよ」


「あー、・・知り合いにもらいまして」

「そりゃ結構なことだけどよ、寂しい奴だなお前」

「へ？」




その知り合いとやらは、おそらく友達といけとでも
言いたかったんだろうが、どうやらその意図は
こいつに届かなかったらしい。





「俺しか誘う奴がいねーたァ、
その齢で何ぼっち極めてんだよ」


「い、いえ！別にぼっちというわけでは」





否定したAは、そのままゴニョゴニョと
口ごもってしまった。今度はこっちが首を傾げる。

何か地雷でも踏んだか。ぼっちってのがいけなかったのだろうか。俯いたそいつの顔を覗き込もうと
した時。ーーふと、決心したような表情が見えて。









「・・銀さんと、行きたいと思いましたので」





次の瞬間には、何やら馴染みのない類のセリフが
聞こえて来た。






「ーーは？」

「何だか、頻繁に会っていたせいか、最近あまり
顔を見なくなって何だか落ち着かなくて」




照れ混じりにそう言って笑うそいつに、
ーー何やら、小さく疼く胸。

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