【銀魂】難あり波もあり

理解時間 ページ23

ー銀時サイドー



撃ち抜かれたような衝撃。
嫌な鼓動が一つ、俺の胸を貫いた。

人混みに紛れて、あまりよく見えねェが、
しかし見間違えることなどあるはずがない姿が、
街を行く。・・いや、それだけならよかったのだ。




「ーーーありゃAさんじゃねーですか？」

「・・・」


「隣にいる野郎は、誰ですかねィ」




呑気そうに呟いた沖田だったが、
「随分親しげですね」と。俺としては、いいネタを
仕入れたとばかりにニヤつく悪魔に仕返しする術を
思いつく余裕もなく、ただ呆然とAをみやる。


ーーーそいつの隣を歩くのは、若い青年だった。


爽やかな笑顔を浮かべ、時折談笑を交わす。
そんな様子を、黙って見送る俺になど
気づくはずもなく。やがて、人混みの中へと消えて
見えなくなった。






(・・どういう状況だ、一体)




悪質なナンパだろうか。
最近化粧を始めたらしいそいつは、少しは女らしく
なってきたが、まさか悪い虫でも付きだしたか。
・・いや、それにしては特に嫌がる様子はなかった

それどころか、むしろ逆。子供のように嬉しそうな
笑顔を浮かべていた。






「ーーーやれやれ、くっついた途端に浮気たァ、
Aさんも案外やり手だったみてーだ」


「・・あほか。あいつにそんな器用なこと
できるかよ」

「さてね。・・だが、あの様子はただの友達って
感じの雰囲気じゃねェですぜ」




タチの悪い煽り方をしてきやがる。
どうせ俺で遊んでいるんだこいつは。

手に持った湯呑みの中で、お茶がゆれる。
茶柱なんつーモンが立っているのを見つけて、
ささやかな幸運を感じ取っていたはずが、
・・いつの間にやら、運勢が狂っちまったらしい。



Aに器用な真似は無理だ。加えて嘘が下手なのだ
やましいことがあるなら、すぐわかる。

まだ少しの付き合いとはいえ、あいつの人となりは
理解しているつもりだ。



ーーもやりとした感情が、浮かんでは消えて行く。




自分の中でいくら言い訳をしたって、
真実がわかるわけではない。こればかりは、本人に
確認を取るか、はたまた見て見ぬ振りをするのか。


Aと男の姿が脳内にフラッシュバック。
確かに、ただの友達ってわけじゃなさそうだ。






(・・余裕ぶっこいてちゃだめってことか)




ひとまず、今は整理する時間が必要なのだ。

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