【銀魂】光に焦がる虫

鎖なしの狂犬 ページ16

ー土方サイドー


検討なんざつくわけもない。
元よりあいつがこの江戸の町に行くアテなど
あるはずがないんだ。

やたらめったに探したって、見つからねェ。







「雨、降ってきましたね」

「・・ああ」




報告に来た山崎はふと、騒がしくなった外に
意識を向けて呟いた。ザーザーと雨音がこだまする


あいつは、濡れてないだろうか_____







「水岡の件、こりゃ難儀ですね。
名前がわかったところで、どこにいるとか、
何を売ってるとか。深い部分が見えてこない」


「上等じゃねーか」




相当厄介な敵ってことだ。
ここが俺たちの腕の見せ所。

何としてでもとっ捕まえてやる。


Aの影を必死で振り払いながら、
俺は隣においた刀に手を伸ばした。






「相手に不足はねェ。ーー引き続き捜査を進めろ」

「わかりました！」







山崎の足音が遠ざかり、やがてきえていった。

新しいタバコに火をつけ、一つ紫煙を燻らしながら
再びよぎった女に思いを馳せた。



ーーあの世界を出たあいつは、一体どうやって
生きるつもりなのだろうか。あんなに利口な女が
まさか行き当たりばったりなんつーことは
ないだろうが。


いやそれよりも、






「・・何でまた突然、」




心変わりでもあったのは確かだが、
一体全体どんな変化だというのだろう。

想像もつかなかった。




あの部屋で、優雅にキセルを持ったその姿は、
この江戸の街を歩くことに違和感を感じさせる。

似合わねーな、と。苦笑を漏らした。




"好き"


その言葉を受け入れるには、
俺の覚悟があまりにも足りなかった。

闇遊郭に囚われたあの女を、外の世界に連れ出すなど、俺にそんな資格はない。


あいつのためにも、区切りをつけたほうがいい。
ーーーだが、






(・・あいつ自らこっちに来たとあっちゃァ、)




そんな俺の気遣いも全部無駄になるってことで。

そうして、もう鎖のついていないあの曲者と
顔を合わせることに、規制などなくなったのだ。

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