【銀魂】光に焦がる虫

悪あがき ページ20

"万事屋"の看板を掲げたそこが、例の銀髪のお兄さんが住む家らしい。



シンプルな家具の中では、糖分の文字が異質だ。
ソファに腰掛けた私は、一息ついた。その様子を
見届けたらしきその人は。






「ーーーで、警察に通報しねーの？」


「・・素性を明かすのは、気がひけるんだよ」


「訳ありってか」


「そんなところだね」




ふーん、と特に興味のなさそうな声を上げ、
私の前に湯呑みを置いた。

湯気の立つそれをしばらく見つめ、手をつける。






「ま、詮索する気はねーけどよ」




この男のテキトーさは、どこかありがたかった。






「けど、実際のところどうすんだよ。
また狙われちまう可能性だってあるだろ」


「その時はその時さ。ーーそれに、私は別に、
あいつらに取っ捕まっても構わないんだよ」


「・・はあ？」




わけがわからないとでも言いたげな顔である。

私だって、自分がわからない。
死ぬのが嫌だと必死で逃げ出してきたってのに、
今度は捕まってもいいと諦めている。ーーいや、




(・・満足しちまってんのかね)





こうして、自分の運命に抗って外に逃げられたことに対して、満足しちまったのかもしれない。

その場合、結局あの人に会うことは叶わないけれど
ーーそれはそれで、ロマンチックな別れじゃないか









「・・そうだ、万事屋さん、ーーひとつ、頼まれて
くれないかい？」





でもせめて、何か最後に悪あがきができたなら、
私にしては上出来じゃないだろうか。

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