【銀魂】棘を包んだ花

寒くて寂しい ページ9

懐かしいはずの自室。
畳の上に座り込み、何気なく見渡して見る。



ーーーどうにも、広すぎるようで。
暖房は完璧に効いているはずなのに、寒くて寂しい






(・・あんなところで生活していたからね)




真選組の屯所は、汚くて狭くて。
それでいて、どこか暖かかった。

いつでも、常に仲間がそばにいる。
集団行動というのは不便で面倒なものだと思ったが

寄り添える者が近くにあるというのは、
とても幸福なことなのだ。







「・・沖田、」



突如口をついて出たのは、
その名であった。


ぼんやりと眺める先にある時計は
ーー私がいつも外出をねだる時間を指していた。









「ーーーーA、いるか」

「ッ、・・・はい」




障子の向こうに浮かび上がったシルエット。
渋く貫禄のある声は、父上のものである。

そういえば、今日は久々に家でゆっくりする時間が
できたため、顔を見せると言っていた。



私の返事から間も無く開いた障子。
顔を出した父上は、柔らかく微笑んだ。





「・・元気そうだな」

「ええ。父上もご健勝そうで」





久しぶりに会った父上は、ここ数週間で
少し痩せたように見える。

長政様の事件や、他に抱える仕事があれば
当然のことかもしれない。






「お前には不便をかけたな」

「私、父上が思っているよりずっと逞しいのよ。
これしきのこと、どうってことないわ」





それなりに楽しくさせてもらった。ーーーその生活が消えた今、寂しくなってしまうほどに。









「長政殿が死んで、またお前を1人にしてしまった」





父上が私に婿をあてがったのは、
私のためなのだと。そんなことはわかりきっていた


多忙なこの人が構えないぶん、私の相手をさせるために、明江長政を夫として迎えたのだ。



想ってくれているからこその行動。







「ーーー・・1人、知り合いの官僚にいい男が
いるんだ。会ってみないか？」




けれどその行動は、
今となっては余計なお世話なのだ。





「沢山大吉。有望な官僚だ」

「沢山、様ですか」



父上によっておもむろに開かれた見合い写真に写る
上品で端正な顔つきの男性も、出世の足がかりとして私を利用するのだろうか。

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