【銀魂】棘を包んだ花

幸福感 ページ42

静かな時の中、見つめあったままの私たち。吐息すら混じり合ってしまいそうなその距離は、心臓が痛くて苦しくて、ーーでも、離れようとは思わなかった。






「満足かい」

「ええ」


「あー、なるほど」

「・・何よ」




呆れたように吐き出された言葉。
この男に呆れられるようなことなどしただろうか







「A、・・お前ここまでしかしたことねーな」


「は？」

「明江長政とは、いわゆるフレンチキッス止まり。
濃厚なディープでアダルトなキッスは未経験って
ことでさァ」


「ディッ・・！？」




いや、さすがに概要は知っているけれど
果たしてそれはマストなものなんだろうか。






「何でぃ、恥ずかしいんですかィ？」


「ッ、そういうわけではありません！ただ、こんな
いつ人が来るかわからないような外でなんてッ、
はしたないでしょう！」

「それが燃えるんでさァ」

「どういう趣味をしているのあなた」







ーーー"試してみるかィ"





艶やかに弧を描く口元に、惹きつけられる。
照れとか、恥とか、そういうものは胸の中で渦巻いているのに、・・NO、なんて答えはなくて。


この人はきっと、私を扱うのがうまいのだ。









「ーーー試して・・あげてもいいわよ」

「口開けろ」
「は？」
「早く」


「そんっ・・」





小さく開いたタイミングを、沖田は見逃さなかった

すかさず塞がれた口。鼻から抜ける息。
わずかに隙間を作る唇をたどるようになめられ、
びくりと体が震えた。




時折漏れる互いの声に、顔が熱くなる。
何をしてるんだろう、私は。









(ーーーこんなところで、はしたない)






経験したことのないそれだが、恐怖などは一切
感じることはなく。混じる吐息や視線に、
ただ一つの幸福感を覚えたのだった。

花開く→←気持ちのいい時間

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す