【銀魂】棘を包んだ花

気持ちのいい時間 ページ41

沖田の腕の中は、暖かい。


この人、手のひらは少し冷たいことも
あるんだけれど、ーーこうして密着すれば、
暖かな体温と落ち着く匂いで包んでくれる。




「へェ、なら文春砲なんざ怖くねェな」


「・・何の大砲よそれは」

「あ？知らねーんですか」

「わ、私に武器の嗜みはありません」





こもった声で反応する私を、ケラケラと笑う彼。
それにあわせ、その胸元が小さく揺れた。






「まあ、あれでさァ。人の色欲が大好きで、
爛れた恋愛してる大人見つけてはケツ追っかけて
捕まえて、あることないこと書きつけて晒し者に
するっつー恐ろしい悪魔の通称でさァ」


「あなた、オカルトの類を信じるタチだったの？」

「あり？苦手ですか？」


「何を言うの。どうってことないわ」





大した会話ではないが、
少し顔を出していた恐怖心は、
この間にもどんどん消えていく。

これが沖田の力であり、ーー惚れた弱み、とでも
言うのだろうか。








「沖田、ーーあなたは、今日は私の言うことを
聞いてくれると言う解釈でいいのよね？」

「は？いや別に召使いやるってわけじゃ、」
「一つ、あるの」





お願いが。

好き人に、触れたい、近づきたい、共にいたい
全て正しい感情。おかしくない。

顔を上げれば、沖田の顔。
こんなに近くにいる。近づいて、共にいる。
もちろん触れてもいるけれど、ーーそれだけでは
なんだか満足できなくて。








「あなたに、触れたいです」




その形のいい輪郭が縁取る顔に手を伸ばす。
頬に触れれば、無造作に流された髪の毛が、
時折手に触れた。







「・・触れたい？」

「ええ」

「触れてんじゃねェですか」

「違うわ」




どこか熱を持った顔。
あのポーカーフェイスで冷静な沖田も、
少しは、私に対して心臓を跳ねさせているのか。









「ーーーキスしなさい」




特別なことがしたい。
好きだからこそできること。

私の言葉に一瞬目を丸くした沖田は、
小さく笑った。







「あんた、経験あんのかィ」

「・・あるわよ、結婚してるもの」




「ーーー、あぁ、それもそうか」





どこか呟くように納得した沖田は、
・・私の後頭部に手を添えて、

強く強く、引き寄せた







「ーーっ、」







柔らかな唇に触れた。長く触れ合っていたようで、・・実は一瞬なんだろう。

離れた後に見た沖田の瞳は、揺れていた。




(・・なんだろう)



長政様の時には、こんなに心地いい時間は
流れなかった。

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