【銀魂】困惑必須の受愛物語

情くらいある。 ページ1

ー神威サイドー


内通者の話がでて、一週間ほどが経過した。

Aや阿伏兎によれば、いまだ原因となる
裏切り者は見つかっていないとのことで。


特にAは、度重なる警戒と捜索で疲労を
顔ににじませていた。






「ダイジョーブ？」

「・・・そんなこと聞く前に、何か手伝おう
とか思わないんですか？」


「それはお前たちの仕事だろ？」
「冷徹クソ兎」



整った口元から紡がれる悪態も、あまり覇気が
ないようだ。

保管庫にある椅子の上で、だらりと身体を
背もたれに預け、天を仰ぐAの髪が、
空中でゆるりと揺れる。





「大体、こんなに敵作ったのは誰だと思ってるんですか。何で部下が上司の尻拭いしなきゃ
ならないんですか」

「いつの間にか作っちゃうことってあるだろ？
ほら、病気しかり」

「黙ってもらえますかねガン細胞」




ガン細胞とは、それは言い過ぎではないか。
相当に困憊しているらしい。

肩をすくめた俺を、一瞬睨みつけ
次に小さくため息をついた。





「・・もういいです。とりあえず目障りなので
出て行ってもらえますか」

「え、何で」
「目障りだからです。聞いてました？」




広い保管庫の床に散らばった資料。
こいつはここ数日、部屋に戻っていないらしい

隈ができたAの目下。







「ーーーねぇ、Aは夜兎が嫌いなんだろ」

「そうですけど何か」


「なら、何でこんなに一生懸命仕事するの？」




俺の質問に、眉をひそめたそいつは、
「はぁ？」と。一つ疑問を声にした。



だって、そうじゃないか。

夜兎が嫌いだというならば、第七師団を救うために仕事をする理由が見当たらない。

思いいれがないならば、内通者なんて
放っておけばいい。ーーーなのにどうして、
寝る間も惜しんで仕事をするのか。


心底わからなかった。




疲れの滲んだ表情に、
少しの呆れを浮かべたそいつは






「私、夜兎は嫌いですけど、・・ーーそりゃ、
情くらいありますから」





ぼそり、ためらうように呟いていた。






「情？」

「仮にも、長時間一緒に宇宙をさまよっていた
仲ですし？それが不本意とはいえ、知った顔が
死にゆくのは見たくないんです」





目を見開く俺に、「まああなたにはわからない
でしょーけど、」と一つ嘲笑したそいつは、
椅子から立ち上がった。





「ーーーてことで、私は血を流させないために
仕事に戻ります」





こいつは本当に、・・いつも予想を超えてくる

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