消えそうな泡 左馬刻視点 ページ6
Aと合流した後、探偵事務所までAを送る。最初に会った時のAは魂が抜けたように死にそうな顔をしていた。
海辺で何故倒れていたのか。帰る場所はもう無いとはどういう事か。Aは何処から来て、何者なのか。
未だに分からない事は多いが、俺はAを見て自 殺した母親が頭をよぎった。
だから、深く問い詰めることはしなかった。
もしかしたら何かあってコイツも……?と考えたからだ。
(探偵になると言い出した時は何故探偵?と驚いたが……元気になったみてぇで何よりだ)
Aは慣れたように情報を集め、チンピラ相手でも物怖じしなかった。むしろ、何処か余裕すら感じた。
(実は銃兎にこっそりAについて調べてもらったが、何にも出てこなかったつってたし……Aの奴今までどうやって暮らしてたんだ?家族とか、ダチとか恋人とかはいんのか?)
色々と気になってつい世話を焼いてしまったが、Aと接してみて、コイツなら何だかんだで一人過ごせそうだなと感じた。
意外と強かなのだ。これが。
「そういやぁ、お前ってペットでも飼ってたのか?例えかもしんねーけど、さっき自分の方が飼い慣らすのは得意だとか言ってたろ?」
「さて、どうかな」
「何だそれ」
「騒がしい荒くれ者の“犬”なら、飼ってた時期はあったよ。鼻が良く効くんだ」
「Aは犬が好きなのか?」
理鶯の質問にAは「いや、別にそういう訳では無いけど」とバッサリ切り捨てる。
「ただ、一時的に預かっていただけさ」
そう答えるAは遠くを見つめていた。
Aはあまり自分の話をしない。
けれど、こうやってたまに心ここに在らずって具合に別の場所を見ている。
Aが何を考えているかは知らないが、放っておいたら何時の間にかふと消えちまいそうな危うさがコイツにはある。
(コイツが何処に行こうがコイツの勝手だが……そのまま本当に戻って来ない気がしてならねぇ。変な感じだな。ったく……)
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イマツギ(プロフ) - 続きが楽しみです。お時間があれば更新頑張ってください! (2022年3月12日 12時) (レス) @page34 id: f5ff06f155 (このIDを非表示/違反報告)
紅 - 面白い!更新頑張って下さい! (2020年4月10日 13時) (レス) id: ceacd95bed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遙 | 作成日時:2016年2月6日 20時