薄れ、変わっていく記憶 常守視点 ページ32
────────元の世界。
「常守監視官、最近何だか違和感ありませんか?」
六合塚さんの言葉で、私は「やっぱりそう思う?」と逆に聞く。
「“何か物足りない”気がするんですよね……」
「自分も同じです」
椅子に座っていた須郷さんが椅子を回転させて私の方を向く。いつからか、何らかの違和感を感じ取るようになったのだが、それが何か分からない。
「霜月監視官に話してみたことあったけど、“気の所為なんじゃないですか”ってあしらわれちゃって……。四係の土岐園監視官も同じ事言ってたの」
「物足りないと言えば、うちにいつ“新しい執行官”が入るんですかね」
須郷さんが空いている席を静かに見つめ、六合塚さんが「もう少し先になりそうね」と返す。
(執行官……)
「にしても、まさか今回の鹿矛囲の事件であの二人が“いなくなってしまう”なんて……」
「つい最近まで一緒にいたようにも感じて仕方ないんですけど、あの二人はもういないんですね」
六合塚さんの言いたいことは分からなくはない。
私も同じだからだ。きっと須郷さんも……。
「だとしても、この違和感は何なんでしょうね。単に、あの二人がいなくなってしまったのが理由なのか……自分の思い過ごしでしょうか」
「ううん。私も同じ事考えてた」
そんな時、霜月監視官が入ってきて「何辛気臭い顔してるんですか」と言ってくる。
「人数が少なくなった分、やる仕事が増えるんですから。“宜野座執行官と雛河執行官”の分の穴埋めもしないといけないし」
「うん。そうだね。じゃあ、仕事に取り掛かろうか」
現状、一係には執行官が六合塚さんと須郷さんの二人しかいない。宜野座さんと雛河君は鹿矛囲の事件解決の最中に事故で……。
(いや、事故?何の事故だっけ。この間まで普通に話してた気がするけど、いつの記憶なんだろう)
この時の私達は、自分達の記憶から大事な記憶が徐々に消え、改変されている事にまだ気付いていなかった。それはきっと、理屈で説明出来る現象では無い。だからこそ余計に、その事実を信じられないのだろう。
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イマツギ(プロフ) - 続きが楽しみです。お時間があれば更新頑張ってください! (2022年3月12日 12時) (レス) @page34 id: f5ff06f155 (このIDを非表示/違反報告)
紅 - 面白い!更新頑張って下さい! (2020年4月10日 13時) (レス) id: ceacd95bed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遙 | 作成日時:2016年2月6日 20時