気遣い ページ4
私はヒプノシスマイクを持ってもいなければ、ラップも出来ないので後の事は二人に任せている。
言葉が力を持つこの世界で、ヒプノシスマイクは警戒すべき武器だ。
案の定、男達はラップバトルで左馬刻達に負け、身動き取れない状態になっていた。
「大丈夫か?A」
「はい。お陰様で助かりましたよ」
「もうすぐ銃兎達が来るだろう。小官と左馬刻は一度別の場所へ移動する。後ほど海岸の方で落ち合おう」
「えぇ。事情聴取ついでに探偵の宣伝をしておかねばなりませんからね」
去っていく二人の姿を見送ると、近くからパトカーのサイレン音が聞こえた。
(この世界に来てもう何ヶ月たっただろうか)
─────────数ヶ月前。
私が海辺で水浸しになって倒れていた所を偶然あの二人が見つけた。
車が無いので救急車を呼ぼうとしたらしいが、一瞬だけ意識を取り戻した私が「病院は駄目だ」と口にしたので、私は仕方なく火貂組の事務所へと運ばれた。
翌日、目を覚まして二人に色々と質問されたが、上手く説明出来ない事柄や、帰る場所はもう無いと私が黙ってしまうと、二人は互いの顔を見合わせてそれ以上問い詰める事はしなかった。
(私は自分が死んだと思っていたからな。自分の置かれた状況を理解するのに時間がかかった)
その間私は部屋に閉じこもっていたが、気を使ってくれた左馬刻達が気晴らしにと街へ連れ出してくれた。そこでようやく、ここは私の居た世界では無いと知った。
(暫くは火貂組にお世話になって居候していたが、後からヤクザだと知った時は驚いたな。働きもせずにずっとお邪魔する訳にも行かないから、自分に出来ることを考えて“探偵”をやると言ったが……まさか空いてる他の事務所を貸してくれるとは。理鶯は手続きを手伝ってくれたし)
それからと言うもの、世話になった分の恩は返そうと思い、自分の事務所で寝泊まりしながら依頼が来ない間は火貂組にとってタメになる情報を集めたりしていた。
二人の仲間にはヤクの元締めに力を入れているという警察、入間銃兎がいる事も耳にし、薬 物関係の情報も仕入れて影で銃兎に協力していた。
(それで、タレコミ主が気になった銃兎に左馬刻が私を紹介してやっとMAD TRIGGER CREW全員と対面したんだっけ。今回は左馬刻達からの依頼だったが、カタギの人からの依頼も来る時は来るし、まだまだこれからって感じだな。しかし、気遣ってもらってばかりだな。私にわざわざ依頼したのも彼等なりの気遣いだし)
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イマツギ(プロフ) - 続きが楽しみです。お時間があれば更新頑張ってください! (2022年3月12日 12時) (レス) @page34 id: f5ff06f155 (このIDを非表示/違反報告)
紅 - 面白い!更新頑張って下さい! (2020年4月10日 13時) (レス) id: ceacd95bed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遙 | 作成日時:2016年2月6日 20時