検索窓
今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:5,329 hit

自由とは 宜野座視点 ページ17

(街中の看板などを見るあたり、俺がいる場所は新宿のようだが……困ったな。俺の知ってる新宿と違う上に、お金も紙幣ときたか。街頭スキャナーも無ければ、建物の外装も恐らくホロでは無く“本物”。歩道側にある木々も。何がどうなってる)

行く宛ても無く街を歩いていると、交番と一昔前の“お巡りさん”の様な格好をしている男が見えた。
それだけでも吃驚だが、他人の様子を伺えば食事はオートサーバーでは無く人の手料理。先程も話したようにお金のやり取りは紙幣かカード。
何から何までシビュラシステムが出来上がる前の時代だ。と言っても、昔の時代の話何て俺は親父から聞いただけだが。

(まさかとは思うが、シビュラシステムが出来上がる前の時代に来たとか?そんな非現実的な話有り得るか?幾ら俺のいた時代の技術が発展しているとしても過去に戻るなんて……)

そんな時だった。
建物のモニターにニュース映像が流れ、一人の女性の姿が映る。画面端には“内閣総理大臣の東方天乙統女”と表示されており、自分の目を疑った。

(女性の内閣総理大臣だと?日本に女性の内閣総理大臣がいるだなんて初耳だぞ。いや……もしかしたら、ここは“過去”じゃなくて単にシビュラシステムの無い世界?くそ……考えれば考えるほどよく分からん。とにかく、今はどうにかして食料と寝床の確保をすべきか?いざと言う時は山でも森にでも行って野宿か)

そんな事を考えていると、知らぬ内に歌舞伎町に辿り着く。廃棄区画ならともかく、飲み屋からちょっと怪しげな雰囲気の店までもが堂々と並んでいる。

(親父が生きた昔の時代ってのは、こんな感じだったのだろうか。オートサーバーの飯よりも本物の食材を使った料理が美味いと言っていたし。変な感じだ)

今もまだ、自分の置かれた状況に困惑している。
仮にこれが夢ではなく、俺の非現実的な憶測が事実だったとして、俺が突然居なくなって常守達はどうしているだろうか。迷惑をかける。

(バーチャルのように、寝ている間に機械をはめられてこのような映像を見せられている可能性も否めないが誰が何のために?そもそもどうやって俺の部屋に入った等の疑問が出てくるな)

そうじゃないとすれば、俺のこの現状は“本当の自由”になるのだろうか。
監視されることも無く、シビュラシステムを気にする事もなく、自分の意思で好きに動き回る。
思わずフッと笑みがこぼれた。解放された嬉しさではない。

「逃げた狡噛は、ある意味自由なのかもな」

……俺が知っていた“自由”とは何だったのだろうか。

見えぬ神→←診察室 宜野座視点



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (13 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
10人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

イマツギ(プロフ) - 続きが楽しみです。お時間があれば更新頑張ってください! (2022年3月12日 12時) (レス) @page34 id: f5ff06f155 (このIDを非表示/違反報告)
- 面白い!更新頑張って下さい! (2020年4月10日 13時) (レス) id: ceacd95bed (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2016年2月6日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。