黄瀬くん、あなたは私にとって……なんなんでしょうね？５

１５６　比べてる　黄瀬side ページ13

黄瀬side

｢きゃー！黄瀬君ー｣

うるさい。黙れ。

｢こっち向いて〜｣

誰が向くかよ。

｢ちょっと、邪魔よ！｣

邪魔なのはお前らだ。






Aっちと別れてもうすぐ二週間になる。

あの日以来時間が過ぎるのがなぜかとてつもなく遅く感じる。




毎日飽きもしないでオレの周りに群がる女は邪魔で邪魔で仕方ない。





Aっちとの約束を忘れたワケではない。

だけど、オレはまた作り笑いをするようになった。


もし、こんなオレをAっちが見たらまた最初からやり直せるのだろうか…？





いや、なにバカなことを考えているんだろう。







オレが別れを切り出したんだぞ？

また話せるかも知れないなんて、





そんなことありえるハズがないのに…








｢黄瀬くーん｣






少し遠いところでアイツのわざとらしい猫なで声がする。

そういえば、テレビで見た話だけど人は


不快感を感じる音は無意識で集中して拾ってしまう習性があるらしい。


こんなに人が多いのにアイツの声がオレの耳に届いたのは多分それが原因だろう。








オレが頭の中でそんな事を考えていたら、

千春は不意に立ち止まって何かを探している。







まぁ、そんな事はどうだっていい。


興味なんてない。


ある奴がいたらびっくりだ。




｢…………黄瀬君、行くわよ｣




どうやら諦めたらしく千春はオレの腕を取る。



触んじゃねーよ。




香水がキツくて鼻の奥が痛くなる。





千春が何かをする度にAっちが必ず頭に浮かんで、



『Aっちだったら』



なんて考えてしまっていつの間にか比べてる。









別れたと言ってもやっぱりAっちのことが好きで好きで仕方ない。

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