二百五十話 ウィル・オブ・タイクーン ページ3
探偵社の隠れ家の階段を壁伝いの静かに登る敦。
辿り着いた扉を開けると、そこでは着物を一枚だけまとった紅葉が、ベッドの上に座り本を読んでいた。
「おや」
紅葉は敦の気配に気づいていたのか、既に本から顔を上げ扉の方を向いていた。
「珍しいの童、そなた一人かえ」
「…………」
敦は紅葉の問いには答えず、静かに扉を閉める。
しかし紅葉に気にした様子はなく、笑って言った。
「ゆるりと寛いでゆけ。
見ての通り幽閉の身ゆえ、茶菓子も出せんがの」
「幽閉?
………鍵もない部屋で?」
紅葉の言葉に、敦は眉を顰めると、わざとらしくガチャガチャとドアノブを鳴らす。
紅葉は微かに笑みを湛えながら、頭を人差し指でトントンと叩いてみせた。
「鍵なら此処じゃ。太宰の掛ける鍵は目に見えんでのう」
そう言った紅葉に、敦は太宰の言葉を思い出す。
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「紅葉姒さんは当面は無害だよ」
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「で?何用じゃ童。私を消しに来たか?
あるいは不手際を
紅葉のその言葉に、敦はあからさまに反応し、顔を強張らせた。
「なんじゃ図星か」
「違う
僕は……ただ皆を守ろうと……」
そう言いながらも、敦の脳内に思い出されるのは、恐怖の表情を浮かべた春野とナオミ、血を吐いて倒れたAだった。
ナオミたちはAが命がけで庇い、代わりになったため、大した傷は負わなかったものの、狂器迫った敦を見た後では、敦を怖がるほかなかった。
「ふん……、太宰は面倒な教え子ばかり受持つのう」
敦の様子に状況を軽く察した紅葉がため息をつくと、敦はきっと紅葉を睨んだ。
「忘れろ忘れろ。
貴様如き豎子の所業、端から誰も期待しておらぬわ。
………そういえば童、Aはどうしたのじゃ?彼の娘はお主の教育係なのじゃろう?」
「A、ちゃんは……」
「どうした?」
「昨日、任務先で血を吐いて倒れてから、意識不明だ」
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??(???)??(プロフ) - 神作品すぎてここまで読んでしまった……夢主ちゃんどうなっちゃうの!?長生きして欲しい……これからも作者様のペースでよろしくお願いします! (1月9日 21時) (レス) @page23 id: 71a0ede70a (このIDを非表示/違反報告)
花見月 - いつも楽しく読ませてもらっています。アンケートですが、1でお願い致します。 (2021年9月24日 0時) (レス) @page5 id: 216d69af47 (このIDを非表示/違反報告)
びっくりさん(プロフ) - 1がいいです。 (2021年9月22日 21時) (レス) @page5 id: d067fbdc83 (このIDを非表示/違反報告)
レイ - 1が良いです。 (2021年9月22日 18時) (レス) @page5 id: 3b590f766f (このIDを非表示/違反報告)
ヒナ(プロフ) - 個人的には1が良いです。 (2021年9月22日 1時) (レス) @page5 id: 91a3e851e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ark | 作成日時:2021年9月12日 7時